グリストラップとは?仕組み・役割・清掃の基本を洗剤メーカーが解説

グリストラップの仕組み・役割・清掃の基本を解説する図解

飲食店の厨房に設置されている「グリストラップ」。

普段から目にしていても、「何のために設置されているのか」「どの部分を清掃すればよいのか」までは分からない方も多いのではないでしょうか。

グリストラップは、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離し、排水管や下水道へ流れ込む量を抑えるための設備です。

設置するだけで油脂や汚れがなくなるわけではありません。適切な清掃を行わずに使い続けると、悪臭や害虫、排水管の詰まり、排水の逆流などにつながる可能性があります。

この記事では、グリストラップの仕組みと役割、基本的な清掃方法、清掃頻度の目安を、飲食店経営者や店舗スタッフの方に向けて分かりやすく解説します。

グリストラップとは

グリストラップとは、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離・回収するための設備です。

「グリーストラップ」「グリース阻集器」「油脂阻集器」と呼ばれることもあります。

飲食店の厨房では、食器や調理器具を洗う際に、次のようなものが排水へ混ざります。

  • 調理油
  • 肉や魚から出る脂
  • スープやソース
  • 米粒や麺
  • 野菜くず
  • 細かな食品残渣

油脂を含んだ排水をそのまま流すと、排水管の中で温度が下がった際に油脂が固まり、詰まりや悪臭の原因になるおそれがあります。

グリストラップは、厨房と下水道の間で油脂や食品残渣を受け止め、下流へ流れ出る量を減らす役割を担っています。

グリストラップは油脂を分解する設備ではない

グリストラップは、油脂を自動的に分解して消す設備ではありません。

排水を槽内に一定時間とどめ、水より軽い油脂を水面へ浮かせ、重い食品残渣や汚泥を底へ沈めることで分離します。

そのため、グリストラップの中には、分離された油脂や汚泥が少しずつ蓄積していきます。

正常な状態を保つには、たまった食品残渣、油脂、汚泥を定期的に回収しなければなりません。

グリストラップの主な役割

グリストラップには、主に次の4つの役割があります。

排水に含まれる油脂を分離する

油脂は水より軽いため、水面へ浮く性質があります。

グリストラップでは、この性質を利用して油脂を水面へ浮かせ、槽内にとどめます。

比較的油脂の少ない水を下部から排出することで、排水管や公共下水道へ流れる油脂を減らします。

生ごみや食品残渣を取り除く

厨房排水には、米粒、麺、野菜くずなどの固形物も含まれます。

グリストラップの入口付近には、バスケットと呼ばれるかご状の部品があり、大きな食品残渣を受け止めます。

バスケットにごみがたまりすぎると、排水が流れにくくなるだけでなく、腐敗による悪臭や害虫の発生にもつながります。

排水管の詰まりを防ぐ

排水管へ流れ込んだ油脂は、温度が下がると固まりやすくなります。

排水管の内側に油脂が少しずつ付着すると、水の通り道が狭くなり、排水不良や詰まりを引き起こす可能性があります。

グリストラップで油脂を分離し、定期的に清掃することは、店舗内の排水設備を守るうえでも重要です。

下水道施設への負担を軽減する

大量の油脂や食品残渣が公共下水道へ流れ込むと、下水道管の詰まりや処理施設への負担につながります。

グリストラップを適切に管理することは、店舗内のトラブルを防ぐだけでなく、下水道設備を守るためにも必要です。

グリストラップの仕組み

一般的なグリストラップは、仕切り板によって複数の槽に分かれています。

3槽式の場合は、厨房から流れてきた排水が第1槽、第2槽、第3槽の順にゆっくりと移動します。

基本的な流れは次のとおりです。

  1. バスケットで大きな食品残渣を受け止める
  2. 水面へ油脂を浮かせる
  3. 重い汚泥を槽の底へ沈める
  4. 比較的油脂の少ない水を排出する

第1槽で食品残渣を取り除く

厨房から流れてきた排水は、最初に第1槽へ入ります。

第1槽には、バスケットと呼ばれるかご状の部品が設置されています。

バスケットでは、主に次のような食品残渣を受け止めます。

  • 米粒
  • 野菜くず
  • 肉や魚の切れ端
  • 調理中に出た食品残渣

バスケットにごみがたまると排水の流れが悪くなるため、基本的には毎日確認し、必要に応じて回収します。

第2槽で油脂と汚泥を分離する

バスケットを通過した排水は、第2槽へ進みます。

槽内では水の流れが緩やかになるため、水より軽い油脂は水面へ浮き、重い食品残渣や汚泥は底へ沈みます。

汚れの種類主にたまる場所基本的な処理
生ごみ・大きな食品残渣バスケット取り出して回収する
浮上した油脂水面網やひしゃくですくい取る
細かな残渣・汚泥槽の底清掃用具や吸引作業で回収する
付着した油脂・ぬめり壁面や仕切り板ブラシや洗浄剤で清掃する

水面の油脂や底に沈んだ汚泥は、自然になくなるわけではありません。

清掃しなければ槽内に残り続け、油脂を分離するための空間を圧迫します。

第3槽から排水する

第2槽を通過した排水は、第3槽へ進みます。

第3槽では、さらに油脂や沈殿物を分離し、比較的油脂の少ない水を排水管へ送ります。

排出口付近には、油脂の少ない下部の水を排出するためのトラップ管が取り付けられている場合があります。

第3槽まで大量の油脂が流れている場合は、次のような原因が考えられます。

  • 水面の油脂が多すぎる
  • 底部の汚泥がたまりすぎている
  • 仕切り板が正しく設置されていない
  • 排水量がグリストラップの処理能力を超えている
  • 高温の排水や大量の排水を流している

第3槽に油脂が目立つ場合は、清掃頻度や設備の状態を見直しましょう。

仕切り板を外してはいけない理由

仕切り板は、排水の流れを調整し、油脂や汚泥を分離するための重要な部品です。

仕切り板を外したまま使用すると、排水が短時間でグリストラップを通過し、油脂を十分に分離できなくなる可能性があります。

清掃のために取り外した場合は、作業後に必ず正しい位置へ戻してください。

部品の向きや設置位置が分からなくなるのを防ぐため、取り外す前に写真を撮っておくと安心です。

グリストラップを清掃しないとどうなる?

グリストラップの清掃を怠ると、店舗営業にも影響するさまざまなトラブルが起こりやすくなります。

悪臭が発生する

バスケットに残った生ごみや、槽内の油脂・汚泥を放置すると、腐敗して臭いが発生します。

厨房内だけでなく、排水口や床の隙間を通じて、臭いが客席まで広がる場合もあります。

臭いが出てから清掃するのではなく、汚れが腐敗する前に取り除くことが大切です。

害虫が発生しやすくなる

食品残渣や油脂がたまったグリストラップは、ゴキブリやチョウバエなどが発生しやすい環境になります。

ふたを閉めていても、槽内の汚れが多ければ、隙間や排水経路から害虫が出入りする可能性があります。

排水の流れが悪くなる

バスケットが詰まったり、排水管へ油脂が付着したりすると、水の流れが悪くなります。

状態が悪化すると、厨房内へ排水が逆流したり、床へあふれたりするおそれがあります。

本来の分離機能が低下する

水面や底部に大量の油脂・汚泥がたまると、新しい排水を受け入れる空間が狭くなります。

その結果、油脂を十分に分離できず、本来は槽内へ残るはずの油脂が排水管へ流れ出やすくなります。

グリストラップ清掃の基本手順

グリストラップの清掃では、汚れを種類ごとに回収します。

基本的な作業は次の4つです。

  1. バスケットの食品残渣を取り除く
  2. 水面に浮いた油脂を回収する
  3. 底に沈んだ汚泥を取り除く
  4. 槽内や部品に付着した汚れを落とす

清掃前に用意するもの

  • ゴム手袋
  • 防水エプロン
  • 必要に応じて保護眼鏡やマスク
  • バスケット用の水切り袋
  • 油をすくう網やひしゃく
  • 柄の長いブラシ
  • 汚泥を回収する道具
  • 回収物を入れる容器や袋

グリストラップ周辺は滑りやすいため、床や靴底の状態も確認してから作業を始めましょう。

1.バスケットの食品残渣を取り除く

最初に、バスケットにたまった食品残渣を取り除きます。

バスケットを持ち上げ、水分を十分に切ってから、店舗所在地のルールに従って処理してください。

水切り袋やネットを使用すると回収しやすくなります。

ただし、目が細かすぎるネットは排水の流れを妨げる場合があるため、水が正常に流れているかも確認しましょう。

2.水面に浮いた油脂を回収する

次に、水面へ浮いている油脂を網やひしゃくなどですくい取ります。

油脂をホースの水で排水管へ押し流してはいけません。

槽内から油が見えなくなっても、排水管へ移動しただけであり、下流で固まって詰まりの原因になる可能性があります。

3.槽の底に沈んだ汚泥を取り除く

槽の底には、バスケットを通過した細かな食品残渣や汚泥が沈んでいます。

底部を確認し、汚泥がたまっている場合は、清掃用具を使って回収します。

槽が深い場合や大量の汚泥がたまっている場合は、無理に作業せず、専門業者への依頼を検討しましょう。

4.槽内や部品を洗浄する

食品残渣、油脂、汚泥を回収したあと、槽の壁面、バスケット、仕切り板、トラップ管などに付着した汚れを清掃します。

ブラシや、設備の材質に使用できる業務用洗浄剤を使い、油脂汚れやぬめりを落とします。

洗剤や薬剤を使用する場合は、次の点を確認してください。

  • 対象となる汚れ
  • 使用できる材質
  • 使用量や希釈方法
  • 必要な保護具
  • 放置時間
  • 使用後の処理方法
  • 混ぜてはいけない薬剤

洗剤だけですべての汚れを処理しようとせず、食品残渣、浮上油、汚泥の回収と組み合わせることが基本です。

グリストラップの清掃頻度

清掃頻度は、店舗の業態、営業時間、客数、油の使用量、グリストラップの容量によって異なります。

清掃箇所頻度の目安主な作業
バスケット毎日食品残渣を取り除く
水面の油脂週1回程度浮いている油脂を回収する
底部の汚泥月1回程度沈殿した汚泥を取り除く
槽内・仕切り板汚れに応じて付着した油脂やぬめりを落とす
トラップ管定期的に付着汚れや詰まりを確認する

これは一般的な目安です。油分が多い店舗では、水面の油脂を毎日回収するなど、汚れの状態に合わせて頻度を増やす必要があります。

次のような店舗では、油脂や汚泥がたまりやすいため、より短い間隔で確認しましょう。

  • ラーメン店
  • 中華料理店
  • 焼肉店
  • とんかつ店
  • 天ぷら店
  • 揚げ物を多く提供する居酒屋
  • 大量調理を行うホテルや給食施設

次の状態が見られた場合は、予定日を待たずに清掃してください。

  • バスケットから水があふれそうになっている
  • 水面の広い範囲が油脂で覆われている
  • 第3槽まで油脂が流れている
  • 排水の流れが以前より遅い
  • 悪臭が発生している
  • 槽の底に大量の汚泥がある

グリストラップを汚れにくくする方法

清掃負担を軽減するには、グリストラップへ流れ込む油脂や食品残渣を減らすことが重要です。

食器や調理器具の油を拭き取る

油の多い皿、鍋、フライパンは、洗浄前にキッチンペーパーやスクレーパーなどで汚れを取り除きます。

厨房排水へ流れる油脂が減れば、グリストラップにたまる量も抑えられます。

調理後の油を排水へ流さない

フライヤーや鍋に残った油を、シンクへ流してはいけません。

廃油として回収し、契約している回収業者や自治体のルールに従って処理してください。

スープやソースをそのまま流さない

ラーメンのスープ、カレー、ドレッシングなどにも油脂が含まれています。

できるだけ回収し、回収できない場合でも、こす、または布や紙で拭き取るなどの工夫を行いましょう。

清掃担当者と記録方法を決める

担当者が決まっていないと、「誰かが清掃しているだろう」と思い込み、作業が抜ける可能性があります。

曜日や時間帯ごとに担当者を決め、次の項目を記録しましょう。

  • 清掃日
  • 担当者
  • バスケットのごみの量
  • 水面の油脂の量
  • 底部の汚泥の量
  • 臭いの有無
  • 排水の流れ
  • 部品の破損や異常

グリストラップ清掃でやってはいけないこと

油脂や汚泥を排水へ流す

回収するべき油脂や汚泥を、ホースの水などで排水管へ流してはいけません。

排水管の中で油脂が冷えて固まると、詰まりや悪臭の原因になります。

仕切り板を外したまま使用する

仕切り板を外したままにすると、排水の滞留時間が短くなり、油脂を分離する機能が低下する可能性があります。

清掃後は、必ず正しい位置へ戻してください。

高温のお湯を大量に流す

高温の排水では、油脂が液状になったままグリストラップを通過しやすくなります。

固まった油脂をお湯で溶かし、排水管へ押し流すような清掃は避けましょう。

洗剤や薬剤を自己判断で混ぜる

異なる洗剤や薬剤を混ぜると、有害なガスが発生したり、設備を傷めたりするおそれがあります。

必ず商品ラベルや使用説明書に従ってください。

洗剤を入れるだけで清掃を終わらせる

グリストラップ清掃の基本は、食品残渣、浮上油、汚泥を物理的に回収することです。

洗浄剤は、槽内や部品に付着した油脂汚れを落としやすくする補助として使用します。

回収した油脂や汚泥の処理方法

グリストラップから回収した食品残渣、油脂、汚泥は、排水へ戻さず、適切に処理する必要があります。

回収物の分類や処理方法は、店舗所在地や契約している廃棄物処理業者によって異なる場合があります。

具体的な処理方法は、次の窓口へ確認してください。

  • 店舗所在地の自治体
  • 下水道担当部署
  • 建物の管理会社
  • 一般廃棄物収集業者
  • 産業廃棄物処理業者

自己判断で排水へ流したり、ほかのごみと混ぜたりしないことが重要です。

自分で清掃する場合と業者へ依頼する場合

日常的な食品残渣や浮上油の回収は、店舗スタッフでも対応できます。

一方で、大量の汚泥がたまっている場合や、排水管の詰まりが疑われる場合は、専門業者への依頼が適しています。

店舗で行いやすい作業業者への依頼を検討する作業
バスケットの食品残渣回収槽内全体の吸引清掃
水面に浮いた油脂の回収大量の汚泥の除去
手の届く範囲のブラシ清掃排水管の高圧洗浄
仕切り板や部品の清掃悪臭や詰まりの原因調査
日常的な点検と記録本体の破損や漏水の点検

次のような場合は、早めに専門業者へ相談しましょう。

  • 清掃しても排水の流れが改善しない
  • 排水が逆流している
  • 第3槽まで大量の油脂が流れている
  • 強い悪臭が続いている
  • 槽が深く、安全に清掃できない
  • 長期間、槽内全体を清掃していない
  • 本体にひび割れや漏水がある

グリストラップに関するよくある質問

グリストラップと排水口の違いは何ですか?

排水口は、厨房で使用した水を排水管へ流す入口です。

グリストラップは、その排水に含まれる油脂や食品残渣を分離・回収するための設備です。

グリストラップに水がたまっていても問題ありませんか?

通常、グリストラップには水がたまっています。

槽内に排水を滞留させることで、水面へ油脂を浮かせ、底へ汚泥を沈めているためです。

ただし、水が流れない、水位が不自然に高い、逆流しているといった場合は、バスケットや排水管の詰まりを確認してください。

清掃のたびに水を全部抜く必要がありますか?

日常清掃のたびに、必ずしも槽内の水をすべて抜く必要はありません。

バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥を回収し、必要に応じて壁面や部品を清掃します。

槽内全体の吸引清掃が必要な場合は、専門業者へ相談してください。

洗剤を使えば油脂を回収しなくてもよいですか?

洗剤を使用する場合でも、バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥の確認と回収が必要です。

洗浄剤は、付着した油脂汚れの除去を補助するものとして使いましょう。

清掃しても臭いが消えないのはなぜですか?

次の場所に汚れが残っている可能性があります。

  • バスケットの裏側
  • 仕切り板
  • 槽の底
  • トラップ管
  • ふたの裏側
  • 厨房の排水溝
  • 排水管内部

槽内を清掃しても臭いが続く場合は、下流の排水管や設備の不具合も確認する必要があります。

油脂汚れの清掃を補助する方法

グリストラップの壁面や仕切り板に付着した油脂汚れには、用途に合った業務用洗浄剤を取り入れる方法もあります。

「グリスとれ~る」は、アルカリによる石鹸水化作用を利用し、グリストラップの油脂汚れ除去をサポートする業務用洗浄剤です。日常的な食品残渣、浮上油、汚泥の回収と組み合わせ、店舗の清掃方法に合う場合の選択肢として活用できます。

商品情報や使用方法は、以下の公式販売ページで確認できます。

まとめ

グリストラップは、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離し、排水管や公共下水道へ流れ込む量を抑えるための設備です。

一般的なグリストラップでは、次の流れで排水を処理します。

  1. バスケットで大きな食品残渣を受け止める
  2. 水面へ油脂を浮かせる
  3. 底へ細かな残渣や汚泥を沈める
  4. 比較的油脂の少ない水を排出する

ただし、グリストラップは油脂や汚れを自動的に消す設備ではありません。

バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥を定期的に回収し、仕切り板やトラップ管を正しい状態に保つことで、本来の機能を維持できます。

清掃を怠ると、悪臭、害虫、排水管の詰まり、排水の逆流などにつながる可能性があります。

毎日の点検と定期清掃を習慣化し、汚れが多い場合や排水トラブルが発生している場合は、専門業者への依頼も検討しましょう。

参考・引用元