グリストラップには、厨房の床へ埋め込むタイプ、シンクの下へ置くタイプ、屋外へ設置するタイプなどがあります。
見た目や設置場所が異なるため、「どのタイプを選べばよいのか」「床置き型でも飲食店に使えるのか」「屋内型と屋外型では何が違うのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
グリストラップは、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離し、排水管や公共下水道へ流れ込む量を抑える設備です。
種類によって設置工事の方法、容量、清掃のしやすさ、必要なスペースなどが異なります。
ただし、単純に大きい設備を選べばよいわけではありません。店舗の業態、排水量、使用する油脂の量、設置場所、建物の構造などを確認したうえで選ぶ必要があります。
この記事では、グリストラップの主な種類、屋内型・屋外型・床置き型の違い、それぞれのメリットと注意点、店舗に合った設備を選ぶポイントを分かりやすく解説します。
グリストラップの種類は設置方法によって分けられる
グリストラップは、正式には「グリース阻集器」と呼ばれます。
製品によって形状や材質は異なりますが、設置方法で分類すると、主に次の種類があります。
- 厨房の床下へ埋め込む屋内埋設型
- シンクの下や横へ置く床置き型
- 建物の外へ設置する屋外埋設型
- 建物の共用設備として設置する大型タイプ
それぞれの特徴を簡単に比較すると、次のとおりです。
| 種類 | 主な設置場所 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 屋内埋設型 | 厨房の床下 | 厨房排水を近い場所で処理しやすい |
| 床置き型 | シンクの下や横 | 床を大きく掘らずに設置しやすい |
| 屋外埋設型 | 店舗裏や建物周辺 | 大容量の設備を設置しやすい |
| 共用・大型型 | 地下設備室や共用部分 | 複数店舗や大量排水に対応しやすい |
どの種類でも、排水を槽内に一定時間とどめ、水より軽い油脂を水面へ浮かせ、重い食品残渣や汚泥を底へ沈めるという基本的な仕組みは同じです。
屋内埋設型グリストラップ
屋内埋設型は、飲食店の厨房床へ本体を埋め込んで設置するタイプです。
厨房の床にある長方形または正方形の金属製のふたを開けると、内部にバスケット、複数の槽、仕切り板、トラップ管などがあります。
飲食店で一般的に見られるグリストラップの一つです。
屋内埋設型のメリット
- 厨房排水が発生する場所の近くへ設置しやすい
- 排水管へ油脂が流れ込む前に分離しやすい
- 床下へ収まるため厨房スペースを圧迫しにくい
- 厨房スタッフが日常点検を行いやすい
- バスケットや浮上油脂をこまめに回収しやすい
グリストラップは、油脂を含む排水が出る場所のできるだけ近くへ設置することが重要です。
厨房内へ設置すれば、シンクや食器洗浄機などから排出された油脂を、長い配管へ流す前に受け止めやすくなります。
屋内埋設型の注意点
- 設置時に床や配管の工事が必要になる
- ふたを開けると厨房内へ臭いが広がることがある
- 清掃中に厨房動線をふさぐ場合がある
- ふたの上へ物を置くと点検できない
- 古い設備では本体の腐食や漏水が起こることがある
グリストラップの上へ冷蔵庫、作業台、食材、段ボールなどを置くと、ふたを開けられません。
設備の上部と周囲には十分な作業スペースを確保し、いつでも清掃できる状態にしておきましょう。
屋内埋設型が向いている店舗
- 一般的な飲食店
- ラーメン店
- 中華料理店
- 焼肉店
- 居酒屋
- ホテルや旅館の厨房
- 給食施設
厨房から一定量以上の排水が発生し、日常的に油脂を使用する店舗では、屋内埋設型が採用されることがあります。
床置き型グリストラップ
床置き型は、厨房の床へ本体を埋め込まず、シンクの下や横などへ設置する箱型のグリストラップです。
「シンク下型」「置き型」「簡易設置型」などと呼ばれることもあります。
ステンレス製や樹脂製の本体へシンクの排水管を接続し、内部で食品残渣や油脂を分離します。
床置き型のメリット
- 床を大きく掘らずに設置できる場合がある
- 既存店舗へ後付けしやすい
- 小規模な厨房にも導入しやすい
- 本体の位置を確認しやすい
- ふたを開けて清掃しやすい製品がある
賃貸物件などで床を大きく改修できない場合や、既存店舗へグリストラップを追加したい場合に検討されます。
東京都下水道局の案内でも、営業中の店舗や賃貸店舗へ設置できる種類があるとされています。
床置き型の注意点
- 埋設型に比べて容量が小さい製品が多い
- 油脂や食品残渣が早くたまりやすい
- 清掃頻度を増やす必要がある場合がある
- 厨房の作業スペースを狭くすることがある
- 接続方法が不適切だと漏水する可能性がある
- 排水量が多い厨房には適さない場合がある
床置き型は設置しやすい反面、排水量に対して本体が小さすぎると、油脂が十分に浮上する前に流出口へ到達する可能性があります。
シンクへ大量の水を一度に流す店舗や、食器洗浄機を使用する店舗では、設備の処理能力を確認しなければなりません。
床置き型が向いている店舗
- 小規模なカフェ
- 軽食を中心に提供する店舗
- 小型のテイクアウト専門店
- 厨房の床下へ設備を設置できない店舗
- 既存設備へ追加対策が必要な店舗
- 排水量が比較的少ない厨房
ただし、小規模店舗であっても、ラーメン、揚げ物、中華料理など油脂量が多い場合は、床置き型では容量が不足することがあります。
屋外埋設型グリストラップ
屋外埋設型は、店舗の裏側、建物の側面、駐車場脇など、建物の外へ埋め込んで設置するタイプです。
地面にマンホール状や長方形の点検ふたがあり、その下に大容量の槽が設けられています。
屋外埋設型のメリット
- 厨房内の作業スペースを使用しない
- 比較的大きな容量を確保しやすい
- 厨房内へ清掃時の臭いが広がりにくい
- 吸引清掃車から作業しやすい場合がある
- 大量調理施設にも対応しやすい
大型飲食店、ホテル、病院、学校、食品工場など、排水量が多い施設では、屋外へ大型のグリストラップを設置する場合があります。
屋外埋設型の注意点
- 厨房から設備までの配管が長くなる場合がある
- 配管途中へ油脂が付着する可能性がある
- 厨房スタッフから見えにくく清掃を忘れやすい
- 雨水や土砂が流入しない構造が必要
- ふたの上へ車両や荷物を置くと点検できない
- 専門業者による清掃が必要になる場合がある
厨房から屋外のグリストラップまでの距離が長いと、排水管内で油脂が冷えて固まる可能性があります。
設置場所だけでなく、配管の距離、勾配、曲がり、保温状態なども含めて設備業者へ確認しましょう。
屋外埋設型が向いている施設
- 大型飲食店
- ホテル・旅館
- 病院
- 学校や給食センター
- 食品工場
- ショッピングセンター
- 大量調理施設
共用型・大型グリストラップ
テナントビル、商業施設、フードコートなどでは、複数店舗の厨房排水を一つの大型グリストラップへ集めることがあります。
本体は地下の設備室、建物外部、共用部分などに設置され、施設管理会社や専門業者が管理します。
共用型のメリット
- 複数店舗の排水をまとめて処理できる
- 店舗内の設置スペースを減らせる
- 専門業者による計画的な管理を行いやすい
- 大容量の設備を使用できる
共用型の注意点
- 各店舗の管理責任が分かりにくくなる
- 一店舗から大量の油脂が流れると全体へ影響する
- 共用設備までの配管が詰まることがある
- 清掃費用の負担方法を確認する必要がある
- 異常時の連絡先を把握しておく必要がある
共用グリストラップがある場合でも、各店舗で油脂や食品残渣を自由に流してよいわけではありません。
排水口のごみ受けを使用し、調理油や残ったスープを直接流さないなど、店舗側の排水対策も必要です。
屋内型・屋外型・床置き型の違いを比較
| 比較項目 | 屋内埋設型 | 床置き型 | 屋外埋設型 |
|---|---|---|---|
| 主な設置場所 | 厨房床下 | シンク下・シンク横 | 店舗外・建物周辺 |
| 設置工事 | 床や配管の工事が必要 | 比較的導入しやすい | 掘削や屋外配管工事が必要 |
| 容量 | 小型から大型まである | 比較的小型が中心 | 大容量を確保しやすい |
| 日常点検 | 厨房内で確認しやすい | 本体を確認しやすい | 確認を忘れやすい |
| 清掃作業 | 厨房内で行う | 狭い場所では作業しにくい | 専門業者が対応しやすい |
| 厨房スペース | 床下のため圧迫しにくい | 作業スペースを使う | 厨房スペースを使わない |
| 向いている店舗 | 一般的な飲食店 | 小規模・低排水量の店舗 | 大型店・大量調理施設 |
この比較は一般的な傾向です。
同じ種類でも製品によって容量、構造、清掃方法、対応できる排水量が異なります。
材質によるグリストラップの違い
グリストラップは、設置方法だけでなく、本体の材質によっても特徴が異なります。
主な材質には、ステンレス、樹脂、コンクリートなどがあります。
ステンレス製
ステンレス製は、厨房内の埋設型や床置き型で多く見られます。
- 清掃しやすい
- 比較的耐食性がある
- 製品の種類が多い
- 表面の状態を確認しやすい
ただし、長期間使用すると、腐食、変形、溶接部の劣化などが起こる可能性があります。
樹脂製
樹脂製は、小型の床置き型や屋外埋設型などで使用されます。
- 比較的軽量
- 腐食しにくい
- 運搬や設置を行いやすい
強い衝撃や高温の排水、使用する洗浄剤などによっては、変形や劣化が起こる可能性があります。
コンクリート製
コンクリート製は、屋外や大型施設の埋設設備で使われる場合があります。
- 大容量の槽を設けやすい
- 屋外埋設に対応しやすい
- 重量があり安定しやすい
経年劣化によるひび割れや、継ぎ目からの漏水などに注意が必要です。
グリストラップの大きさによる違い
グリストラップには、小型から大型までさまざまな容量があります。
設備容量が大きいほど多くの排水を受けられますが、大きければ必ず適切というわけではありません。
必要な容量は、次の条件などを基に検討します。
- 店舗の業態
- 客席数
- 1日あたりの食数
- 営業時間
- 使用する水の量
- 使用する油脂の量
- シンクの数
- 食器洗浄機の排水量
- 厨房機器の種類
容量が小さすぎると、排水が短時間で槽内を通過し、油脂が浮上する前に下流へ流れる可能性があります。
一方、容量が大きくても清掃しなければ、水面の油脂や底部の汚泥が蓄積し、本来の性能を発揮できません。
槽の数による違い
一般的なグリストラップは、仕切り板によって複数の槽に分かれています。
よく見られるのは3槽構造ですが、製品の大きさや用途によって形状は異なります。
3槽式では、排水が次の順番で処理されます。
- 第1槽でバスケットが食品残渣を受け止める
- 第2槽で油脂を浮かせ、汚泥を沈める
- 第3槽で残った油脂や汚泥を分離する
- 比較的油脂の少ない水を流出口へ送る
槽の数が多ければ自動的に性能が高くなるわけではありません。
設備容量、排水の滞留時間、仕切り板の構造、使用状況などによって性能が変わります。
店舗に合うグリストラップの選び方
排水量に合った容量を選ぶ
最も重要なのは、厨房から流れる排水量に合った設備を選ぶことです。
小型の床置き型を選んでも、短時間に大量の排水が流れれば、油脂を十分に分離できません。
油脂の使用量を確認する
同じ客席数でも、提供する料理によって発生する油脂量は異なります。
ラーメン店、中華料理店、焼肉店、揚げ物店などは、カフェや軽食店と比べて油脂が多くなる傾向があります。
清掃しやすい場所へ設置する
グリストラップは、設置後も継続的に清掃する設備です。
ふたを開けられない場所、作業者が入れない場所、清掃用具を持ち込めない場所への設置は避けましょう。
配管距離を短くする
厨房からグリストラップまでの配管が長いと、途中で油脂が冷えて固まる可能性があります。
油脂が発生する場所のできるだけ近くへ設置することが重要です。
建物の条件を確認する
賃貸物件やテナントビルでは、床を掘れない、屋外へ設備を置けない、指定工事業者でなければ施工できないなどの条件があります。
設備を購入する前に、貸主や管理会社へ確認してください。
自治体の基準を確認する
グリストラップの設置条件や必要容量、使用できる製品などは、自治体の条例や要綱によって定められている場合があります。
店舗所在地の下水道担当部署や指定排水設備工事事業者へ相談しましょう。
後付けでグリストラップを設置できる?
既存店舗にグリストラップがない場合や、現在の設備では容量が不足する場合は、後付けを検討できます。
床を掘る工事が難しい物件では、床置き型やシンク下型が候補になる場合があります。
ただし、設置スペースへ入るかどうかだけで選んではいけません。
次の項目を確認する必要があります。
- 厨房からの排水量
- 本体の処理能力
- 流入口と流出口の高さ
- 排水管の勾配
- シンクからの距離
- 清掃スペース
- 漏水対策
- 自治体への届出
- 管理会社の工事許可
自己判断で配管へ接続すると、排水不良や漏水の原因になります。給排水設備業者へ依頼してください。
床置き型なら設置義務を満たせる?
床置き型を設置すれば、すべての店舗で設置基準を満たせるとは限りません。
必要な設備容量や性能は、店舗の所在地、業態、排水量、自治体の基準などによって異なります。
床置き型で対応できる場合もあれば、容量の大きい埋設型が必要になる場合もあります。
設置前に、店舗所在地の下水道担当部署や指定排水設備工事事業者へ確認しましょう。
種類にかかわらず定期清掃が必要
屋内型、屋外型、床置き型のどれを選んでも、設備内部には油脂や食品残渣がたまります。
一般的な確認・清掃頻度の目安は次のとおりです。
| 確認場所 | 頻度の目安 | 主な作業 |
|---|---|---|
| バスケット | 毎日 | 食品残渣を回収する |
| 水面の油脂 | 週1回程度 | 浮上した油脂をすくい取る |
| 槽の底 | 月1回程度 | 沈殿した汚泥を回収する |
| 壁面・仕切り板 | 汚れに応じて | 付着した油脂やぬめりを落とす |
| 流入口・流出口 | 定期的に | 詰まりや部品の状態を確認する |
油脂を多く使用する店舗や、小容量の床置き型を使用する店舗では、より短い間隔で確認する必要があります。
グリストラップの種類に関するよくある質問
屋内型と屋外型ではどちらがよいですか?
店舗の規模、排水量、建物の構造、清掃方法によって適した種類が異なります。
厨房内で日常清掃を行いたい場合は屋内型、大容量の設備が必要な場合は屋外型が候補になります。
小型の床置き型でもラーメン店に使えますか?
製品の処理能力と店舗の排水量によって異なります。
ラーメン店はスープや油脂を含む排水が多いため、小型設備では容量が不足する可能性があります。
グリストラップはステンレス製が一番よいですか?
材質だけで良し悪しを判断することはできません。
設置場所、排水温度、必要容量、清掃方法、耐久性などを含めて選ぶ必要があります。
現在のグリストラップの種類はどう確認しますか?
設置場所、本体の材質、メーカー名、型式、容量などを確認します。
本体やふたに銘板がある場合は、記載されたメーカーと型式から仕様を調べられます。
屋外型は店舗スタッフが清掃しなくてもよいですか?
管理会社や専門業者が清掃する場合でも、店舗側の日常管理が不要とは限りません。
バスケットや浮上油脂を誰がどの頻度で回収するのか、管理会社へ確認してください。
グリストラップを交換する目安はありますか?
本体のひび割れ、腐食、漏水、仕切り板の欠損、容量不足などがある場合は交換や改修を検討します。
排水の流れが悪い場合は、本体だけでなく排水管の状態も確認する必要があります。
付着した油脂汚れの清掃を補助する方法
グリストラップは種類にかかわらず、バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥を定期的に回収することが基本です。
これらを回収したあと、槽の壁面や仕切り板に残った油脂汚れには、ブラシや用途に合った業務用洗浄剤を使用する方法があります。
「グリスとれ~る」は、アルカリによる石鹸水化作用を利用し、グリストラップに付着した油脂汚れの除去をサポートする業務用洗浄剤です。
食品残渣、浮上油脂、底部の汚泥を回収したうえで、槽内や部品に付着した油脂汚れを清掃する際の選択肢として使用できます。
商品情報や使用方法は、以下の公式販売ページで確認できます。
まとめ
グリストラップは、設置方法によって屋内埋設型、床置き型、屋外埋設型、共用型などに分けられます。
それぞれの主な特徴は次のとおりです。
- 屋内埋設型:厨房排水の発生場所に近く、日常点検を行いやすい
- 床置き型:床を大きく改修せず、既存店舗へ設置しやすい
- 屋外埋設型:大容量を確保しやすく、大型店舗や施設に向いている
- 共用型:複数店舗の排水をまとめて処理できる
ただし、床置き型だから小規模店舗に必ず適している、屋外型だから性能が高いと単純に判断することはできません。
店舗の業態、客席数、排水量、使用する油脂の量、設置スペース、配管距離、自治体の基準などを確認する必要があります。
また、どの種類でも定期的な清掃が欠かせません。
グリストラップを新設・交換する場合は、自己判断で製品を選ばず、店舗所在地の下水道担当部署、建物管理会社、指定排水設備工事事業者などへ相談しましょう。
