飲食店で働き始めたばかりの方や、居抜き物件を引き継いだ経営者のなかには、「グリストラップがどこにあるのか分からない」という方もいるのではないでしょうか。
グリストラップは、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離する設備です。
一般的には厨房の床下やシンクの近くに設置されていますが、建物の構造によっては厨房の外、建物の共用部分、屋外などに設置されることもあります。
設置場所が分からないままでは、日常的な清掃や点検ができません。清掃されていない状態が続くと、悪臭、害虫、排水管の詰まり、汚水の逆流などにつながる可能性があります。
この記事では、グリストラップの主な設置場所、店舗内での探し方、見分けるポイント、見つからない場合の確認先を分かりやすく解説します。
グリストラップはどこにある?
グリストラップは、厨房から油脂を含む排水が流れ出る場所のできるだけ近くに設置されるのが基本です。
正式名称は「グリース阻集器」といい、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を、排水管や公共下水道へ流す前に分離します。
飲食店でよく見られる設置場所は次のとおりです。
- 厨房内の床下
- シンクや食器洗浄機の近く
- 厨房に隣接したバックヤード
- 店舗の裏側や建物の外
- テナントビルの共用設備スペース
- 地下の機械室や排水設備室
最も一般的なのは、厨房床に金属製のふたが埋め込まれているタイプです。
一方、小規模店舗では、シンクの下や横に小型のグリストラップが設置されていることもあります。
グリストラップを油脂の発生場所の近くに設置する理由
グリストラップは、油脂や食品残渣を含む排水が、長い排水管を通る前に分離できる位置へ設置することが重要です。
厨房からグリストラップまでの距離が長すぎると、排水管の途中で油脂が冷えて固まり、管の内側へ付着する可能性があります。
そのため、一般的には次のような厨房機器の排水が合流する場所の近くに設置されます。
- 調理用シンク
- 食器洗浄用シンク
- 食器洗浄機
- ゆで麺機
- 炊飯設備
- 厨房内の床排水
ただし、すべての厨房機器の排水がグリストラップへ接続されているとは限りません。
機器の排水温度、排水量、建物の配管構造などによって接続方法が異なるため、正確な配管経路は設備図面や専門業者による確認が必要です。
主な設置場所1.厨房内の床下
飲食店で最も多く見られるのが、厨房内の床へ埋め込まれたグリストラップです。
厨房床を見ると、長方形または正方形の金属製のふたが並んでいることがあります。
そのふたの下に、複数の槽へ分かれたグリストラップが設置されています。
床下設置型の特徴
- 厨房排水を短い距離で受け入れやすい
- 厨房内から清掃できる
- 床面とふたの高さがほぼ同じ
- 複数枚の金属製のふたが付いている場合がある
- ふたの下にバスケットや仕切り板がある
床下型は厨房動線の中に設置されるため、上に物を置かれることがあります。
しかし、冷蔵庫、食材、段ボール、台車などを置くと、ふたを開けられず、清掃や点検ができません。
グリストラップの上部は常に空け、ふたを安全に開閉できる状態にしておきましょう。
床のふたを見つけるポイント
厨房床にある金属製のふたが、すべてグリストラップとは限りません。
排水ます、点検口、床下収納、配管点検口などの場合もあります。
グリストラップには、次のような特徴があります。
- シンクや洗浄機の近くにある
- 複数のふたが連続している
- ふたを開けると水がたまっている
- 内部にバスケットがある
- 複数の槽と仕切り板がある
- 水面に油脂が浮いていることがある
重量のある金属製のふたを無理に持ち上げると、腰や指を傷める危険があります。専用の開閉工具を使用し、安全を確保して確認してください。
主な設置場所2.シンクの下や横
小規模な飲食店、カフェ、キッチンカー、簡易厨房などでは、シンクの下や横に小型のグリストラップが設置されることがあります。
このタイプは床へ埋め込まず、箱型の本体へ排水管を接続する構造です。
シンク下設置型の特徴
- ステンレス製や樹脂製の箱型になっている
- シンクの排水管が本体へ接続されている
- 上部に開閉できるふたがある
- 内部にバスケットや仕切りがある
- 比較的小型である
床下へ設置するスペースがない物件でも導入しやすい一方、容量が限られるため、油脂や食品残渣が早くたまることがあります。
シンク下の収納物で本体が隠れている場合や、ふたの上に洗剤や備品が置かれている場合は、清掃しにくくなります。
いつでもふたを開けられるよう、周囲に十分な作業スペースを確保してください。
主な設置場所3.厨房に隣接するバックヤード
厨房内に十分な設置スペースがない場合は、厨房に隣接したバックヤードや作業室へ設置されることがあります。
厨房からの排水管を壁や床下へ通し、バックヤードのグリストラップへ接続する構造です。
バックヤード設置で注意すること
- 物置として使用して設備をふさがない
- ふたの上に重量物を置かない
- 清掃用具を運べる通路を確保する
- 汚水をこぼした際に清掃できる状態にする
- 換気や臭気対策を確認する
バックヤードは食材、飲料、消耗品などの保管場所になりやすいため、グリストラップが荷物で隠れてしまうことがあります。
設備の位置が分かるように床や壁へ表示し、日常的に点検できる状態を保ちましょう。
主な設置場所4.店舗の屋外
グリストラップが、店舗の裏側、駐車場脇、建物側面などの屋外へ設置されるケースもあります。
屋外型では、地面に点検用のふたが設けられていることが一般的です。
屋外設置型の特徴
- 厨房内に臭いが広がりにくい
- 大容量の設備を設置しやすい
- 吸引清掃車から作業しやすい場合がある
- 厨房スタッフから見えにくい
- 清掃状況を把握しにくい場合がある
屋外にあると、日常清掃の対象であることを忘れられやすくなります。
また、グリストラップのふたの上に車両、自転車、資材、ごみ箱などが置かれると、点検できません。
屋外に設置されている場合も、ふたの周囲を空け、清掃日と担当者を決めて管理してください。
屋外型で確認したいこと
- 雨水が大量に入り込んでいないか
- ふたが破損していないか
- 車両の荷重に対応したふたか
- 周囲へ汚水が漏れていないか
- 落ち葉や土砂が入り込んでいないか
- 害虫や小動物が侵入していないか
屋外のふたが車両通行部分にある場合は、安全のため、自分で無理に開けず、管理会社や設備業者へ確認しましょう。
主な設置場所5.テナントビルの共用部分
商業ビル、ショッピングセンター、駅ビル、フードコートなどでは、グリストラップが各店舗内ではなく、建物の共用部分に設置されていることがあります。
複数店舗の厨房排水を、共用の大型グリストラップで処理する方式です。
共用設備の場合の確認事項
- 日常清掃を誰が担当するのか
- 専門業者による清掃費用を誰が負担するのか
- 各店舗で食品残渣をどこまで除去するのか
- 異常発生時の連絡先
- 清掃記録の保管場所
- 油脂流出時の責任範囲
共用グリストラップがある場合でも、各店舗のシンク下などに小型の阻集設備が設置されていることがあります。
「共用設備があるから店舗内の管理は不要」と判断せず、管理会社へ排水設備の構成を確認してください。
主な設置場所6.地下機械室や排水設備室
ホテル、大型商業施設、病院、学校、給食施設などでは、グリストラップが地下の機械室や専用の排水設備室に設置されていることがあります。
厨房から離れているため、店舗スタッフが日常的に直接清掃するのではなく、施設管理担当者や専門業者が管理している場合があります。
地下設備は、酸素欠乏、有害ガス、転落などの危険がある場所もあります。
許可なく設備室へ入ったり、槽内へ入ったりしてはいけません。
位置や管理状況を確認したい場合は、施設管理者へ問い合わせてください。
グリストラップの探し方
店舗内でグリストラップの場所が分からない場合は、次の順番で確認すると見つけやすくなります。
1.シンク周辺の床を確認する
まず、食器洗浄用シンク、調理用シンク、食器洗浄機の周辺を確認します。
床に長方形または正方形の金属製のふたがあれば、グリストラップの可能性があります。
2.シンクの下を確認する
床にふたが見つからない場合は、シンク下の収納物を移動して、排水管の接続先を確認します。
排水管が箱型の設備へつながっていれば、小型グリストラップの可能性があります。
3.排水管の方向を確認する
目視できる範囲で、シンクから伸びる排水管がどちらへ向かっているか確認します。
ただし、床下や壁内の配管を正確に追うことは難しいため、無理に設備を分解しないでください。
4.店舗の裏側や屋外を確認する
厨房の外側や建物裏に、マンホール状のふたや複数の点検口がないか確認します。
屋外のふたは、汚水ますや公共下水道のますである可能性もあるため、自己判断で開けないようにしましょう。
5.図面を確認する
給排水設備図、厨房設備図、竣工図などには、次のような表記が使われる場合があります。
- グリース阻集器
- グリーストラップ
- グリストラップ
- GT
- Grease Trap
- 阻集器
図面の記号や略称が分からない場合は、設計会社や設備業者へ確認してください。
6.管理会社や前の運営者へ確認する
テナント物件では、建物の管理会社や貸主が設備図面を保管していることがあります。
居抜き物件の場合は、前の店舗運営者から清掃方法や設備の位置を引き継げる場合もあります。
グリストラップの見分け方
ふたを開けられる状況であれば、内部の構造からグリストラップかどうかを確認できます。
| 確認部分 | グリストラップの主な特徴 |
|---|---|
| 内部の水 | 通常は水がたまっている |
| バスケット | 流入口付近に食品残渣を受けるかごがある |
| 槽 | 仕切り板によって複数に分かれている |
| 水面 | 油脂や浮遊物が見られることがある |
| 底部 | 細かな食品残渣や汚泥が沈んでいる |
| 流出口 | トラップ管などが取り付けられている |
グリストラップは排水をため、油脂を水面へ浮かせる設備であるため、内部に水があるのは通常の状態です。
ただし、水位が異常に高い、排水が流れない、ふたから汚水があふれている場合は、詰まりが発生している可能性があります。
グリストラップと排水ますの違い
グリストラップと排水ますは、どちらも床や地面にふたがあるため、見た目だけでは判断しにくい場合があります。
| 設備 | 主な役割 | 内部の特徴 |
|---|---|---|
| グリストラップ | 油脂や食品残渣を分離する | バスケット、複数槽、仕切り板などがある |
| 排水ます | 排水管の合流や点検を行う | 配管が接続され、排水が通過する |
| 床排水口 | 床面の水を排水管へ流す | 小型のごみ受けや排水トラップがある |
設備の種類が分からない場合は、内部へ手を入れたり部品を外したりせず、設備図面または専門業者へ確認してください。
グリストラップが見つからない場合
厨房内や屋外を確認してもグリストラップが見つからない場合は、次の可能性があります。
- 建物の共用設備として設置されている
- 地下や設備室に設置されている
- シンク下の小型設備に変更されている
- 荷物や厨房機器でふたが隠れている
- 床の仕上げ材で点検口が分かりにくい
- 以前の改装で撤去されている
- そもそも設置されていない
設置されていない可能性がある場合は、自己判断で営業を続けるのではなく、店舗所在地の下水道担当部署、建物管理会社、給排水設備業者などへ確認しましょう。
居抜き物件で確認したいポイント
居抜き物件では、既存のグリストラップがあるだけで安心とは限りません。
前の店舗と新しい店舗では、調理内容や油脂の使用量、排水量が異なる可能性があります。
例えば、前の店舗がカフェで、新しい店舗がラーメン店や中華料理店の場合、必要な容量が不足することがあります。
居抜き物件では、次の項目を確認してください。
- グリストラップの正確な設置場所
- 店舗専用か建物共用か
- 本体の容量
- メーカーと型式
- 仕切り板がそろっているか
- トラップ管が正しく設置されているか
- 本体にひび割れや漏水がないか
- 底部に古い汚泥が残っていないか
- 清掃履歴が残っているか
- 新しい業態に必要な容量があるか
開業後に排水トラブルが発生しないよう、物件契約や厨房工事の前に設備業者へ確認してもらうことが大切です。
設置場所として避けたい状態
グリストラップは、油脂を排出する場所に近いだけでなく、清掃や点検をしやすい位置に設置されている必要があります。
次のような状態では、適切な維持管理が難しくなります。
- 大型冷蔵庫の下にある
- 作業台でふたが完全にふさがれている
- 棚や食材を移動しなければ開けられない
- 狭くて作業者が入れない
- ふたを開けると厨房動線を完全にふさぐ
- 清掃用具や回収容器を置く場所がない
- 照明がなく内部を確認できない
- 重量物が常に置かれている
上部に移動が困難な物がある場合は、清掃のたびに大掛かりな移動作業が必要となり、結果として清掃頻度が低下しやすくなります。
設備の上や周囲には物を置かず、清掃できるスペースを確保しましょう。
設置場所によって清掃方法は変わる?
設置場所が厨房内、シンク下、屋外のいずれであっても、基本的に清掃する汚れは同じです。
| 清掃場所 | 一般的な確認頻度 | 主な作業 |
|---|---|---|
| バスケット | 毎日 | 食品残渣を回収する |
| 水面の油脂 | 週1回程度 多い場合は毎日 | 浮上した油脂をすくい取る |
| 槽の底 | 月1回程度 | 沈殿した汚泥を回収する |
| 壁面・仕切り板 | 汚れに応じて | 付着した油脂やぬめりを清掃する |
| 流入口・流出口 | 定期的に | 詰まりや部品の状態を確認する |
屋外型や共用型では、専門業者が槽内全体を清掃している場合があります。
ただし、専門業者の清掃日まで、バスケットの食品残渣や浮上油脂を放置してよいとは限りません。
店舗側と管理会社、清掃業者の担当範囲を明確にしてください。
グリストラップの場所をスタッフへ周知する
店長や一部の担当者だけが設置場所を知っている状態では、担当者の休みや退職によって清掃が行われなくなる可能性があります。
店舗の清掃マニュアルには、次の内容を記載しましょう。
- グリストラップの設置場所
- ふたの開け方
- 清掃用具の保管場所
- 清掃する部分
- 清掃頻度
- 回収物の処理方法
- 清掃後に戻す部品
- 異常発生時の連絡先
設置場所の写真や簡単な平面図を掲載すると、新しいスタッフにも分かりやすくなります。
グリストラップの場所に関するよくある質問
グリストラップは必ず厨房内にありますか?
必ずしも厨房内にあるとは限りません。
厨房に隣接するバックヤード、屋外、地下設備室、テナントビルの共用部分などに設置されることがあります。
床にある金属製のふたはグリストラップですか?
グリストラップの可能性はありますが、排水ますや点検口の場合もあります。
内部にバスケット、複数の槽、仕切り板などがあるかを確認してください。
安全に開けられない場合は、管理会社や設備業者へ問い合わせましょう。
シンクの下にも設置できますか?
小型のシンク下設置型グリストラップがあります。
ただし、店舗の排水量や油脂量に合った容量が必要です。設置スペースだけで選ばず、設備業者へ確認してください。
グリストラップの上に棚を置いてもよいですか?
清掃や点検の妨げになる棚や重量物は置かないでください。
ふたをいつでも安全に開閉できる状態を保つ必要があります。
屋外のグリストラップは誰が清掃しますか?
店舗スタッフ、建物管理会社、専門業者のいずれが担当するかは、契約や管理体制によって異なります。
清掃の担当範囲と頻度を管理会社へ確認してください。
場所が分からない場合はどこへ問い合わせればよいですか?
まず、建物の管理会社や貸主へ確認します。
図面がない場合や設備の状態を確認したい場合は、給排水設備業者へ調査を依頼してください。
付着した油脂汚れの清掃を補助する方法
グリストラップの設置場所を確認したら、バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥が適切に回収されているか点検しましょう。
これらを回収したあと、槽の壁面や仕切り板に付着した油脂汚れには、ブラシや用途に合った業務用洗浄剤を使用する方法があります。
「グリスとれ~る」は、アルカリによる石鹸水化作用を利用し、グリストラップに付着した油脂汚れの除去をサポートする業務用洗浄剤です。
食品残渣、浮上油脂、底部の汚泥を回収したうえで、槽内や部品に付着した油脂汚れを清掃する際の選択肢として使用できます。
商品情報や使用方法は、以下の公式販売ページで確認できます。
まとめ
グリストラップは、厨房から油脂や食品残渣を含む排水が流れ出る場所のできるだけ近く、かつ清掃・点検しやすい位置へ設置することが基本です。
主な設置場所は次のとおりです。
- 厨房内の床下
- シンクの下や横
- 厨房に隣接するバックヤード
- 店舗の裏側などの屋外
- テナントビルの共用部分
- 地下機械室や排水設備室
場所が分からない場合は、シンク周辺の床、シンク下、店舗の裏側を確認し、給排水設備図も調べましょう。
それでも見つからない場合は、建物管理会社、貸主、前の店舗運営者、給排水設備業者へ確認してください。
グリストラップの上に冷蔵庫、棚、食材、段ボールなどを置くと、清掃や点検ができません。ふたの周囲は常に空け、スタッフ全員が設置場所と清掃方法を把握できる状態にしておきましょう。
