グリストラップの設置義務とは?飲食店が確認したい法律とルール

グリストラップの設置義務と飲食店が確認したい法律・条例を解説する図解

飲食店を開業するとき、「グリストラップには設置義務があるのか」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。

結論からいうと、グリストラップの設置義務は、全国のすべての飲食店へ同じ条件で一律に適用されるものではありません。

店舗の所在地、建物の構造、厨房排水の量や水質、下水道の種類、自治体の条例や施行規程などによって、設置の要否や必要な設備条件が変わります。

一方で、飲食店の厨房排水には油脂や食品残渣が多く含まれるため、自治体の排水設備基準などにより、グリース阻集器の設置を求められるケースは少なくありません。

設置が必要かどうかを自己判断したまま開業準備を進めると、設備工事のやり直しや営業開始の遅れにつながる可能性があります。

この記事では、グリストラップの設置義務に関係する法律やルール、設置前に確認する窓口、既存店舗や居抜き物件で注意したいポイントを分かりやすく解説します。

グリストラップの設置義務は全国一律ではない

グリストラップは、正式には「グリース阻集器」と呼ばれる設備です。

厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離し、排水管や公共下水道へ流れ込む量を抑える役割があります。

設置義務を確認するときに注意したいのは、「飲食店営業許可を取得するなら、すべての店舗に必ず同じグリストラップを設置する」という単純な全国共通ルールではない点です。

設置の要否や条件には、主に次のルールが関係します。

  • 建築基準法関係規定
  • 下水道法
  • 自治体の下水道条例や施行規程
  • 自治体の排水設備基準
  • 阻集器に関する要綱
  • 食品営業施設の設備基準
  • 建物管理会社や貸主の規約
  • 商業施設やテナントビル独自の設備基準

そのため、インターネット上の一般的な説明だけで判断せず、店舗所在地を管轄する自治体や設備業者へ確認することが重要です。

グリストラップの設置に関係する主な法律とルール

グリストラップの設置義務を確認するときは、一つの法律だけでなく、複数の法令や地域ルールを確認します。

法律・ルール主な確認内容
建築基準法関係規定建築物の排水設備に必要な構造や阻集器
下水道法公共下水道へ排除する下水の水質や除害施設
自治体の下水道条例排水基準、除害施設、届出、維持管理
自治体の施行規程・要綱阻集器の設置方法、容量、認定品、施工方法
食品営業施設の基準排水設備の容量、配置、衛生的な構造
建物やテナントの規約指定設備、工事方法、清掃契約、管理責任

建築基準法関係規定との関係

建築物の給排水設備については、建築基準法とその関係規定により、衛生上支障のない構造とすることが求められます。

排水に油脂、ガソリン、土砂などが含まれ、そのまま流すと配管や下水道設備へ支障を及ぼすおそれがある場合には、対象物を分離する阻集器が関係します。

飲食店の厨房排水では、主に動植物性油脂を分離するグリース阻集器が使用されます。

建築物の新築や大規模な用途変更、厨房設備の新設などを行う場合は、建築士や給排水設備業者が建築基準法関係規定を確認しながら設計します。

ただし、建築物の条件や工事内容によって必要な手続きは異なります。

既存のテナントへ入居する場合でも、以前の設備をそのまま使用できるとは限らないため注意が必要です。

下水道法との関係

下水道法では、公共下水道の施設や処理機能に支障を与える下水について、排除方法や水質基準が定められています。

厨房排水に含まれる油脂が多い場合、排水管や下水道管の詰まり、ポンプ設備の障害、下水処理機能の低下などにつながる可能性があります。

そのため、自治体は下水道条例などに基づいて、事業場から排出される下水の水質を規制しています。

基準を超えるおそれがある排水については、汚濁物質を除去するための除害施設の設置や改善措置を求められる場合があります。

グリストラップは、厨房排水に含まれる油脂を分離する除害施設の一つとして扱われることがあります。

自治体の下水道条例が重要

実際にグリストラップの設置義務を判断するときは、店舗所在地の自治体が定める下水道条例や施行規程が重要です。

条例や規程では、次のような内容が定められている場合があります。

  • グリース阻集器を設置する対象施設
  • 設置が必要となる排水の種類
  • 排水設備工事の届出
  • 指定工事店による施工
  • 使用できる阻集器の条件
  • 必要容量の算定方法
  • 設置後の維持管理
  • 立入検査や改善指導

例えば東京都下水道局は、飲食店等にはグリース阻集器の設置が必要であると案内しています。

また、阻集器に関する取扱要綱を定め、設置と適正な維持管理について指導しています。

このように、自治体によって設置条件や手続きが具体的に決められている場合があります。

すべての飲食店に同じ設備が必要とは限らない

グリストラップが必要となる場合でも、すべての店舗に同じ大きさや構造の設備を設置すればよいわけではありません。

必要な容量や仕様は、次のような条件によって変わります。

  • 飲食店の業態
  • 客席数
  • 1日あたりの食数
  • 営業時間
  • 厨房の使用水量
  • 使用する油脂の量
  • シンクの数
  • 食器洗浄機の排水量
  • 排水温度
  • 設置場所

小さすぎるグリストラップでは、厨房排水が短時間で槽内を通過し、油脂が浮上する前に排水管へ流れる可能性があります。

反対に、設置スペースだけを優先して選ぶと、清掃や点検が困難になることがあります。

設備選定は、店舗の規模や業態を把握した給排水設備業者へ依頼しましょう。

飲食店営業許可との関係

飲食店を営業するには、食品衛生法に基づく営業許可が必要です。

営業許可では、施設が衛生的に使用できる構造や設備を備えているか確認されます。

排水設備についても、十分な排水能力があり、汚水が逆流せず、施設外へ適切に排出できる構造が求められます。

ただし、営業許可の施設基準と、下水道関係のグリストラップ設置基準は、確認する目的や担当部署が異なる場合があります。

保健所から飲食店営業許可を得られたとしても、下水道条例や建物管理規約上の設備条件をすべて満たしているとは限りません。

開業時には、保健所だけでなく、下水道担当部署や建物管理会社にも確認してください。

排水基準とノルマルヘキサン抽出物質

厨房排水の油脂量を確認する指標の一つに、「ノルマルヘキサン抽出物質含有量」があります。

これは、排水に含まれる油脂類などの量を測定するために使われる項目です。

動植物油脂類について、公共下水道へ流す下水の排除基準として、1リットル当たり30ミリグラム以下を定めている自治体があります。

大津市は、下水道法と市の下水道条例に基づく排除基準として、動植物油脂類のノルマルヘキサン抽出物質含有量を30mg/Lと案内しています。

基準を超える排水を流した場合、グリストラップの設置や増設など、必要な措置を求められることがあります。

ただし、適用される排除基準や手続きは自治体や事業場の条件によって異なるため、必ず管轄部署へ確認してください。

設置義務があるか確認する窓口

グリストラップが必要か分からない場合は、複数の窓口へ確認します。

確認先主に確認する内容
自治体の下水道担当部署設置義務、排水基準、届出、指定工事店
保健所飲食店営業許可の施設基準
建築指導担当部署用途変更や建築設備に関する手続き
建物の管理会社・貸主テナント設備基準、工事条件、管理責任
給排水設備業者容量計算、設置位置、配管、施工方法
設計士・建築士建築計画全体との整合性

問い合わせる際は、次の情報を準備しておくと確認がスムーズです。

  • 店舗の住所
  • 建物の用途
  • 新築・改装・居抜きの別
  • 飲食店の業態
  • 客席数
  • 1日の予定食数
  • 厨房機器の種類
  • シンクや食器洗浄機の数
  • 既存グリストラップの有無
  • 既存設備の容量や型式
  • 厨房と排水設備の図面

新規開業時に確認する手順

新しく飲食店を開業するときは、物件契約や厨房工事の前に、グリストラップの条件を確認することが重要です。

1.建物の排水方式を確認する

まず、建物が公共下水道、浄化槽、地域下水道など、どの方式で排水を処理しているか確認します。

排水方式によって、問い合わせ先や必要な設備が異なる場合があります。

2.既存設備の有無を確認する

グリストラップがすでに設置されている場合は、次の項目を確認します。

  • 設備の設置位置
  • 槽の数
  • 容量
  • メーカーと型式
  • 破損や漏水の有無
  • 仕切り板やトラップ管の有無
  • 清掃履歴
  • 排水管の詰まり履歴

3.自治体へ設置条件を確認する

店舗所在地の下水道担当部署へ、飲食店の業態や規模を伝え、設置義務や届出の要否を確認します。

4.設備業者へ容量計算を依頼する

客席数や厨房設備だけを見て自己判断せず、設備業者へ必要容量の確認を依頼します。

5.保健所へ営業許可条件を相談する

厨房図面を持参し、営業許可に必要な施設基準を事前に相談します。

6.管理会社の工事条件を確認する

テナント物件では、指定施工業者、工事時間、排水管への接続方法などが決められている場合があります。

居抜き物件で注意したいこと

居抜き物件に既存のグリストラップがある場合でも、そのまま使用できるとは限りません。

前の店舗と新しい店舗で、業態や排水量が異なる可能性があるためです。

例えば、以前が喫茶店で、新しくラーメン店や中華料理店を開業する場合、油脂量や排水量が大幅に増えることがあります。

既存設備の容量が不足すると、油脂が十分に分離されず、排水管へ流出しやすくなります。

居抜き物件では、次の点を確認してください。

  • 既存設備の容量は新しい業態に合っているか
  • 設備にひび割れや腐食がないか
  • 仕切り板がそろっているか
  • トラップ管が正しく設置されているか
  • 槽の底に古い汚泥が残っていないか
  • 排水管内に油脂が蓄積していないか
  • 自治体への届出が必要か
  • 管理会社の承認が必要か

グリストラップが設置できない物件の注意点

物件によっては、設置スペースや排水管の位置などの問題から、適切なグリストラップを設置できない場合があります。

契約後に設置できないことが分かると、厨房レイアウトの変更や大規模な配管工事が必要になる可能性があります。

次のような物件は、契約前に特に慎重な確認が必要です。

  • 厨房スペースが狭い
  • 床下に十分な深さがない
  • 排水管の位置が遠い
  • 床へ穴を開けられない
  • 屋外に設置場所がない
  • 共用排水管への接続条件が厳しい
  • 上階のテナントである
  • 建物が古く図面が残っていない

物件契約前に、厨房設計業者や給排水設備業者へ現地調査を依頼しましょう。

設置工事は誰に依頼するのか

グリストラップの設置は、厨房機器を置くだけの工事ではありません。

流入管、流出管、排水勾配、通気、設備容量、清掃スペースなどを考慮する必要があります。

自治体によっては、指定排水設備工事事業者による施工を求めている場合があります。

東京都下水道局も、グリース阻集器の設置について、東京都指定排水設備工事事業者へ依頼するよう案内しています。

施工業者を選ぶ際は、次の点を確認しましょう。

  • 自治体の指定工事店か
  • 飲食店の排水設備工事に実績があるか
  • 必要容量を計算できるか
  • 自治体への届出に対応できるか
  • 清掃しやすい設置位置を提案できるか
  • 工事後の点検や修理に対応できるか

設置後にも維持管理の義務がある

グリストラップは、設置しただけで法令やルールを満たし続けられる設備ではありません。

油脂や食品残渣を分離する設備であるため、使用するほど汚れが内部へ蓄積します。

適切に清掃しなければ、阻集能力が低下し、油脂が排水管や下水道へ流出します。

自治体の要綱や案内では、設置だけでなく、適正な維持管理も求められています。

清掃場所一般的な目安主な作業
バスケット毎日食品残渣を回収する
水面の油脂週1回程度浮上した油脂をすくい取る
槽の底月1回程度沈殿した汚泥を回収する
壁面・仕切り板汚れに応じて付着した油脂やぬめりを清掃する
流入口・流出口定期的に詰まりや破損を確認する

油脂量が多い店舗では、水面の油脂を毎日回収するなど、実際の汚れに合わせて頻度を増やす必要があります。

維持管理でやってはいけないこと

グリストラップ本来の機能を低下させる使い方は避けなければなりません。

仕切り板を外したまま使用する

仕切り板は、排水の流れを緩やかにし、油脂を浮上させる時間を確保するための部品です。

外したまま使用すると、油脂が十分に分離されないまま流出口へ到達する可能性があります。

高温の排水を大量に流す

排水温度が高いと油脂が液状のまま通過しやすくなり、十分に分離できない場合があります。

処理能力を超える排水を流す

短時間に大量の排水を流すと、槽内の滞留時間が不足します。

油脂を排水として流す処理を行う

油脂を細かく分散させたり、排水として下流へ流したりする方法では、グリストラップ本来の目的を果たせない可能性があります。

回収した油脂や汚泥を排水へ戻す

清掃で回収した油脂や汚泥を排水口や下水道へ流してはいけません。

自治体や廃棄物処理業者のルールに従って処理してください。

設置義務に違反するとどうなる?

必要なグリストラップを設置しない場合や、排水基準を守らない場合は、自治体から指導や改善を求められる可能性があります。

状況によっては、次のような対応が必要になることがあります。

  • グリストラップの新設
  • 既存設備の増設や交換
  • 設備の清掃
  • 排水方法の改善
  • 排水設備工事のやり直し
  • 水質検査
  • 改善計画の提出

さらに、油脂によって建物の共用排水管を詰まらせた場合は、清掃費用や修理費用について、貸主や管理会社との間で問題になる可能性があります。

法律上の義務だけでなく、賃貸借契約やテナント規約も確認しましょう。

既存店舗でも確認が必要になるケース

すでに営業している店舗でも、次のような場合は設備条件を再確認したほうがよいでしょう。

  • 業態を変更した
  • 客席数を増やした
  • 営業時間を延長した
  • 食器洗浄機を追加した
  • 揚げ物やラーメンなど油脂の多い料理を始めた
  • 排水の流れが悪くなった
  • 第3槽まで大量の油脂が流れている
  • 管理会社から改善を求められた
  • 自治体の立入検査や水質検査を受けた

排水量や油脂量が増えた場合、既存のグリストラップでは容量が不足する可能性があります。

キッチンカーにもグリストラップは必要?

キッチンカーや移動販売車では、固定店舗と設備条件が異なります。

営業許可の施設基準、給排水タンクの容量、調理内容、営業地域などによって必要な設備が変わります。

小型の油脂分離設備や、排水をすべて持ち帰って適切に処理する方法などが求められる場合があります。

固定店舗用のグリストラップと同じ基準で判断せず、営業予定地域を管轄する保健所へ事前に確認してください。

家庭用厨房にも設置義務はある?

一般家庭の厨房と、飲食店などの業務用厨房では、排水量や油脂量が大きく異なります。

通常の住宅へ、飲食店と同じグリストラップを一律に設置するわけではありません。

ただし、住宅を改装して飲食店や菓子製造業などを始める場合は、建物の用途や営業内容が変わります。

営業許可、下水道、建築関係の条件を確認し、必要に応じて設備を追加してください。

グリストラップの設置義務に関するよくある質問

小さな飲食店でも設置が必要ですか?

店舗の面積だけで判断することはできません。

業態、排水量、使用する油脂の量、自治体の規程などによって判断されます。

小規模な店舗でも、厨房排水を流す場合は設置を求められることがあります。

油をほとんど使わない店でも必要ですか?

揚げ油を使用しなくても、肉、魚、乳製品、スープ、ドレッシングなどから油脂が排出されます。

必要性は調理内容や排水量によって変わるため、自治体へ確認してください。

既存のグリストラップがあればそのまま使えますか?

必ずしもそのまま使用できるとは限りません。

新しい業態に対して容量が不足している場合や、部品の欠損、ひび割れ、漏水がある場合は、交換や改修が必要です。

保健所が問題ないと言えば設置しなくてもよいですか?

保健所は食品営業施設の衛生基準を確認する窓口です。

下水道条例、排水設備、建築設備、建物管理規約については、別の担当部署や管理会社への確認が必要になる場合があります。

自治体によってルールが違うのはなぜですか?

下水道の整備状況、排水処理方式、条例、地域の設備基準などが異なるためです。

他の地域のルールではなく、実際に出店する自治体の規程を確認してください。

グリストラップの清掃も義務ですか?

設置したグリストラップは、適正に維持管理する必要があります。

清掃を怠ると阻集能力が低下し、油脂が下水道へ流出するため、自治体から清掃や改善を指導されることがあります。

油脂汚れの清掃を補助する方法

グリストラップの適正な維持管理では、バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥を定期的に回収することが基本です。

これらを回収したあと、槽の壁面や仕切り板に付着した油脂汚れには、ブラシや用途に合った業務用洗浄剤を使用する方法があります。

「グリスとれ~る」は、アルカリによる石鹸水化作用を利用し、グリストラップに付着した油脂汚れの除去をサポートする業務用洗浄剤です。

食品残渣、浮上油脂、底部の汚泥を回収したうえで、槽内や部品に付着した油脂汚れを清掃する際の選択肢として使用できます。

商品情報や使用方法は、以下の公式販売ページで確認できます。

まとめ

グリストラップの設置義務は、全国すべての飲食店へ同じ条件で一律に適用されるわけではありません。

建物の用途、厨房排水の内容、店舗所在地の下水道条例、排水設備基準、自治体の要綱、テナント規約などによって判断されます。

設置義務を確認するときは、次の窓口へ相談しましょう。

  • 店舗所在地の下水道担当部署
  • 保健所
  • 建築指導担当部署
  • 建物の管理会社や貸主
  • 指定排水設備工事事業者
  • 建築士や厨房設計業者

特に新規開業や居抜き物件への入居では、物件契約や厨房工事を始める前の確認が重要です。

既存のグリストラップがあっても、新しい業態に対して容量が不足している場合や、設備が破損している場合は、そのまま使用できない可能性があります。

また、グリストラップは設置するだけでは十分ではありません。

バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥を定期的に回収し、仕切り板やトラップ管を正しい状態に保つことで、本来の阻集機能を維持できます。

参考・引用元