グリストラップはなぜ必要?飲食店に設置する目的をわかりやすく解説

グリストラップが飲食店に必要な理由と設置目的を解説する図解

飲食店の厨房には、なぜグリストラップが必要なのでしょうか。

「油を直接流さなければ必要ないのでは」「排水口のごみ受けだけでは不十分なのか」と疑問に思う方もいるでしょう。

グリストラップは、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離し、店舗の排水管や公共下水道へ流れ込む量を抑えるための設備です。

飲食店の厨房では、食器や調理器具を洗うたびに、目に見えない油脂や細かな食品残渣が排水へ混ざります。

これらをそのまま流し続けると、排水管の内側に油脂が付着し、悪臭、詰まり、排水の逆流などのトラブルにつながる可能性があります。

この記事では、グリストラップが必要な理由、設置する目的、設置しない場合に考えられる問題、設置後の維持管理について分かりやすく解説します。

グリストラップが必要な理由

グリストラップが必要な最も大きな理由は、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を、そのまま排水管へ流さないためです。

飲食店の厨房では、次のようなものが排水に混ざります。

  • 食器や調理器具に付着した油
  • 肉や魚から出る脂
  • ラーメンや鍋料理のスープ
  • ドレッシングやソース
  • 米粒や麺
  • 野菜くず
  • 揚げかすやパン粉
  • 細かな食品残渣

目に見える油を回収していても、食器や鍋の表面には油脂が残っています。

店舗で毎日大量の食器を洗えば、少量ずつであっても、まとまった量の油脂が排水へ流れ込むことになります。

グリストラップは、これらの油脂や食品残渣を厨房と排水管の間で受け止め、下流へ流れる量を減らすために必要です。

グリストラップの主な目的

グリストラップを設置する目的は、単に油をためることだけではありません。

主に次のような目的があります。

目的期待される役割
油脂の分離厨房排水から油脂を浮上させ、槽内にとどめる
食品残渣の回収米粒や野菜くずなどをバスケットで受け止める
排水管の保護油脂や固形物による詰まりを防ぎやすくする
悪臭の予防排水管内での油脂や食品残渣の腐敗を抑える
下水道の保全公共下水道へ流れ込む油脂や汚濁物質を減らす
衛生環境の維持厨房内の悪臭、害虫、排水トラブルを防ぎやすくする

厨房排水から油脂を分離するため

グリストラップは、水と油脂の比重の違いを利用して油脂を分離します。

油脂は水より軽いため、排水の流れが緩やかになると水面へ浮きます。

一方、細かな食品残渣や汚泥など、水より重いものは槽の底へ沈みます。

一般的なグリストラップでは、厨房排水が複数の槽をゆっくり通過する間に、次のように分離されます。

  1. バスケットで大きな食品残渣を受け止める
  2. 水面に油脂を浮かせる
  3. 細かな食品残渣や汚泥を底へ沈める
  4. 比較的油脂の少ない水を排水管へ送る

グリストラップは、油脂を化学的に分解して消す設備ではありません。

排水中から油脂や食品残渣を物理的に分離し、設備内にとどめることが基本的な役割です。

排水管の詰まりを防ぐため

厨房排水に含まれる油脂をそのまま流すと、排水管の内側へ少しずつ付着します。

調理直後や洗浄中は液状に見える油脂でも、排水管内で温度が下がると固まりやすくなります。

油脂が排水管の内側へ繰り返し付着すると、水の通り道が徐々に狭くなります。

さらに、油脂へ食品残渣やごみが付着することで、大きな塊になる可能性があります。

排水管の状態が悪化すると、次のような症状が現れます。

  • シンクの水が流れにくい
  • 排水時にゴボゴボと音がする
  • 排水口から悪臭が上がってくる
  • グリストラップの水位が高くなる
  • 厨房床へ排水が逆流する
  • 排水管の高圧洗浄が必要になる

グリストラップで油脂を分離することは、店舗内の排水管を守るための予防策になります。

悪臭を防ぐため

厨房から流れた油脂や食品残渣が排水管内に残ると、時間の経過とともに腐敗し、悪臭が発生します。

排水管内の臭いは、シンクや床排水口、グリストラップのふたの隙間などから厨房内へ広がることがあります。

状態によっては、厨房だけでなく、客席や店舗入口まで臭いが届くこともあります。

飲食店では、料理の味や接客だけでなく、店内の臭いも顧客の印象に影響します。

グリストラップを設置し、油脂や食品残渣を適切に回収することは、排水設備から発生する悪臭を防ぐうえでも重要です。

ただし、グリストラップ自体を清掃しなければ、槽内にたまった食品残渣や油脂が腐敗して、グリストラップから悪臭が発生します。

設置するだけでなく、定期的に清掃することが必要です。

害虫の発生を防ぐため

油脂や食品残渣がたまった排水設備は、ゴキブリやチョウバエなどの害虫が発生しやすい環境になります。

グリストラップのバスケットに生ごみを残したままにすると、腐敗が進み、害虫の餌や繁殖場所になる可能性があります。

また、排水管内に油脂や食品残渣が付着している場合も、害虫が集まりやすくなります。

グリストラップで食品残渣や油脂を受け止め、こまめに回収することで、害虫が発生しにくい環境を維持できます。

ふたを閉めているだけでは、害虫対策として十分とは限りません。

バスケット、水面、槽の底、仕切り板などを定期的に確認し、汚れを残さないことが大切です。

厨房の衛生状態を保つため

グリストラップは、厨房設備の一部であり、飲食店の衛生管理にも関係します。

適切に管理されていないグリストラップでは、次のような問題が発生する可能性があります。

  • 腐敗した食品残渣による悪臭
  • 油脂や汚水のあふれ
  • 床面の汚染
  • 害虫の発生
  • 清掃作業中の汚水の飛散
  • 排水の逆流による営業への影響

厨房床へ排水があふれれば、調理作業を中断しなければならないこともあります。

また、汚水が床に広がると、滑りや転倒の危険も高まります。

グリストラップは、排水管のためだけでなく、従業員が安全かつ衛生的に働ける厨房環境を保つためにも必要です。

公共下水道を守るため

厨房から排出された油脂は、店舗内の排水管だけでなく、公共下水道にも影響を与えます。

油脂が下水道管の内側へ付着すると、管内の流れが悪くなり、詰まりや設備障害につながる可能性があります。

下水道管に付着した油脂が剥がれ、ポンプ場や処理設備へ流れ込むと、機器の運転へ影響を与えることもあります。

また、厨房排水の汚濁負荷が高い状態で大量に流れ込むと、下水処理場の処理機能へ負担をかけます。

グリストラップは、店舗から出る排水を公共下水道へ流す前に処理する、重要な前処理設備です。

河川や海の水質を守るため

油脂を含む排水は、下水道設備だけでなく、河川や海などの水環境にも影響を与える可能性があります。

適切に処理されなかった油脂や有機物が水環境へ流出すると、水質悪化の原因になります。

飲食店一店舗から流れる量が少なく見えても、多くの店舗から継続的に排出されれば、下水道や水環境への負担は大きくなります。

グリストラップを設置して油脂を分離し、回収した油脂や汚泥を適切に処理することは、地域の環境保全にもつながります。

排水トラブルによる営業への影響を防ぐため

排水管の詰まりや逆流は、飲食店の営業へ直接影響します。

シンクや食器洗浄機の排水ができなければ、調理器具や食器を洗えません。

厨房床へ汚水があふれた場合は、衛生面から営業を一時的に中断し、清掃や消毒を行う必要が生じることもあります。

さらに、専門業者による緊急対応が必要になれば、次のような負担が発生します。

  • 排水管清掃の費用
  • 設備修理の費用
  • 営業時間の短縮
  • 臨時休業による売上損失
  • 食材や備品の廃棄
  • 顧客への説明や予約変更

グリストラップを設置し、日常的に清掃することは、排水トラブルによる営業リスクを抑えることにもつながります。

グリストラップがないとどうなる?

グリストラップを設置せず、厨房排水を直接排水管へ流した場合、油脂や食品残渣が下流へ流れやすくなります。

考えられる問題主な原因
排水管の詰まり冷えて固まった油脂や食品残渣の蓄積
悪臭排水管内での油脂や食品残渣の腐敗
害虫の発生排水設備内に残った有機物
排水の逆流排水管の閉塞や流下能力の低下
下水道への負担油脂や汚濁物質の流入
処理費用の発生高圧洗浄、吸引清掃、配管交換など

目立った問題が起きていないように見えても、排水管内部では油脂が少しずつ蓄積している可能性があります。

完全に詰まってから対応するよりも、グリストラップで油脂を分離し、予防的に管理するほうが、店舗運営への影響を抑えやすくなります。

排水口のごみ受けだけでは不十分な理由

シンクの排水口に設置するごみ受けやネットは、米粒や野菜くずなどの固形物を受け止めるために有効です。

しかし、ごみ受けだけでは、排水に混ざった液状の油脂や細かな汚れを十分に分離できません。

ごみ受けとグリストラップには、次のような違いがあります。

設備主に取り除くもの
排水口のごみ受け比較的大きな食品残渣
グリストラップ食品残渣、浮上油脂、沈殿する汚泥

厨房排水対策では、ごみ受けとグリストラップのどちらか一方を選ぶのではなく、両方を適切に使用することが重要です。

油を直接流さなくても必要な理由

使用済みの揚げ油を回収している店舗でも、グリストラップが不要になるとは限りません。

食器、鍋、フライパン、調理器具などには、目に見えない油脂が付着しています。

ラーメンのスープ、カレー、ドレッシング、肉汁などにも油脂が含まれています。

これらを洗浄するたびに、少量ずつ排水へ混ざります。

また、ごみ受けを通過するほど細かな食品残渣もあります。

グリストラップは、大量の廃油だけを対象にするのではなく、日常的な調理や洗浄で発生する油脂を分離するために必要です。

グリストラップには設置義務がある?

グリストラップの設置については、建物の用途、排水設備の構造、所在地の条例や規程などが関係します。

すべての飲食店に対して、全国一律に同じ条件が適用されるとは限りません。

自治体によっては、条例や排水設備の基準に基づき、飲食店などへグリース阻集器の設置を求めています。

また、テナントの場合は、建物の設備基準や賃貸借契約によって設置が必要になることもあります。

新しく飲食店を開業する場合や、既存設備を交換する場合は、自己判断せず、次の窓口へ確認してください。

  • 店舗所在地の自治体
  • 下水道担当部署
  • 保健所
  • 建物の管理会社
  • 建築士
  • 給排水設備業者

設置の要否だけでなく、必要な容量、設置位置、製品の性能なども確認しておくことが大切です。

グリストラップを設置する場所

グリストラップは、油脂や食品残渣を含む排水が発生する場所にできるだけ近く、清掃しやすい位置へ設置することが基本です。

主な設置場所には、次のようなものがあります。

  • 厨房内の床下
  • シンクや食器洗浄機の近く
  • 厨房に隣接する屋外
  • 建物の排水経路上
  • 施設内の専用設備スペース

設置場所が清掃しにくいと、ふたの開閉や汚泥の回収が負担になり、維持管理が行われなくなる可能性があります。

グリストラップの上に冷蔵庫や棚、重量物などを置くと、清掃や点検ができなくなるため注意が必要です。

設置するときは容量も重要

グリストラップは、設置されていればどの製品でもよいわけではありません。

店舗の排水量に対して容量が小さすぎると、排水が槽内を短時間で通過し、油脂が十分に浮上する前に流出口へ到達する可能性があります。

容量を検討する際は、次のような条件が関係します。

  • 店舗の業種
  • 客席数
  • 1日あたりの食数
  • 営業時間
  • 使用する水量
  • 使用する油の量
  • シンクや食器洗浄機の数
  • 厨房機器から出る排水量

既存店舗でも、業態変更や客席数の増加、厨房機器の追加などによって排水量が増えた場合は、設備容量が不足することがあります。

第3槽まで大量の油脂が流れている場合は、清掃不足だけでなく、設備容量が適切かどうかも確認しましょう。

グリストラップは設置後の管理が重要

グリストラップは、設置しただけでは十分な効果を発揮できません。

分離された食品残渣、油脂、汚泥は設備内へたまり続けるため、定期的な清掃が必要です。

清掃場所頻度の一般的な目安主な作業
バスケット毎日食品残渣を回収する
水面の油脂週1回程度浮上した油脂をすくい取る
槽の底月1回程度沈殿した汚泥を回収する
仕切り板・壁面汚れに応じて付着した油脂やぬめりを落とす
流入口・流出口定期的に詰まりや部品の状態を確認する

清掃頻度は、店舗の業態、油の使用量、客数、営業時間、グリストラップの容量などによって変わります。

ラーメン店、中華料理店、焼肉店、揚げ物を多く扱う店舗では、油脂がたまりやすいため、状態に合わせて清掃頻度を増やしましょう。

適切に管理しないと機能が低下する

グリストラップが設置されていても、適切に管理されていなければ、油脂を十分に分離できません。

主な原因は次のとおりです。

  • バスケットに食品残渣がたまりすぎている
  • 水面の油脂を回収していない
  • 槽の底に汚泥が堆積している
  • 仕切り板が外れている
  • トラップ管が正しく設置されていない
  • 高温の排水を大量に流している
  • 処理能力を超える排水を流している

水面の油脂や底部の汚泥が増えると、排水をためるための有効容量が小さくなります。

排水の滞留時間が短くなれば、油脂が浮上する前に下流へ流れやすくなります。

仕切り板やトラップ管も、油脂の流出を抑えるための重要な部品です。清掃後は必ず正しい位置へ戻してください。

厨房から流す油脂を減らすことも重要

グリストラップを適切に管理していても、厨房から大量の油脂を流し続ければ、設備の処理能力を超える可能性があります。

グリストラップだけに頼らず、排水へ流す前に油脂を減らすことが大切です。

調理油を排水へ流さない

フライヤーや鍋に残った油は、シンクへ流さず、廃油として回収します。

食器や鍋の油を拭き取る

油脂が多く付着した食器や調理器具は、キッチンペーパーや布などで拭き取ってから洗います。

スープやソースをできるだけ回収する

ラーメンのスープ、カレー、ドレッシングなどにも油脂が含まれています。

そのまま流さず、可能な範囲で回収したり、固形物をこしたりしてから処理しましょう。

排水口のごみ受けを使用する

米粒や野菜くずなどは、グリストラップへ流れる前に、排水口のごみ受けやネットで回収します。

グリストラップに関するよくある質問

小さな飲食店でもグリストラップは必要ですか?

店舗の規模だけで一律に判断することはできません。

提供する料理、油の使用量、排水量、建物の設備、自治体の基準などによって異なります。

小規模な店舗でも、油脂を多く使う場合はグリストラップが必要になる可能性があります。

店舗所在地の自治体や設備業者へ確認してください。

油を使わない店なら不要ですか?

揚げ物を扱わない店舗でも、肉や魚、乳製品、ドレッシング、スープなどから油脂が排出されます。

食器や調理器具を洗浄する施設では、一定量の油脂や食品残渣が厨房排水へ混ざる可能性があります。

設置の要否は、料理の内容や排水量、地域の基準などを基に判断する必要があります。

グリストラップがあれば油を流してもよいですか?

グリストラップが設置されていても、調理油や大量の油脂を排水へ流してはいけません。

グリストラップには処理できる容量があり、大量の油脂を流すと十分に分離できず、排水管へ流出する可能性があります。

洗剤で油を溶かせば問題ありませんか?

油脂が水中に細かく分散すると、見た目では油がなくなったように見えることがあります。

しかし、油脂そのものが消滅したとは限りません。

グリストラップの基本は、食品残渣、浮上油脂、底部の汚泥を回収し、下水道へ流さないことです。

お湯で油を流してもよいですか?

高温のお湯によって油脂が一時的に液状になっても、排水管の下流で温度が下がれば再び固まる可能性があります。

また、高温の排水がグリストラップへ大量に流れると、油脂が十分に分離されないまま通過することがあります。

グリストラップを清掃しても水が汚れているのは問題ですか?

グリストラップには厨房排水が流れ込むため、槽内の水が完全な透明になるとは限りません。

重要なのは、バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥を回収し、排水が正常に流れている状態を保つことです。

油脂汚れの清掃を補助する方法

グリストラップを正常に機能させるには、バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥を定期的に回収する必要があります。

これらを回収したあと、槽の壁面や仕切り板に残った油脂汚れには、ブラシや用途に合った業務用洗浄剤を使用する方法があります。

「グリスとれ~る」は、アルカリによる石鹸水化作用を利用し、グリストラップに付着した油脂汚れの除去をサポートする業務用洗浄剤です。

食品残渣、浮上油脂、底部の汚泥を回収したうえで、槽内や部品に付着した油脂汚れを清掃する際の選択肢として使用できます。

商品情報や使用方法は、以下の公式販売ページで確認できます。

まとめ

グリストラップは、厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離し、店舗の排水管や公共下水道へ流れ込む量を抑えるために必要な設備です。

主な目的は次のとおりです。

  • 厨房排水に含まれる油脂を分離する
  • 食品残渣を排水管へ流さない
  • 排水管の詰まりや逆流を防ぎやすくする
  • 悪臭や害虫の発生を抑える
  • 厨房の衛生状態を維持する
  • 公共下水道や処理施設への負担を減らす
  • 河川や海などの水環境を守る
  • 排水トラブルによる営業への影響を防ぐ

ただし、グリストラップは設置するだけで油脂を処理し続ける設備ではありません。

バスケットにたまった食品残渣、水面に浮いた油脂、槽の底に沈んだ汚泥を定期的に回収し、仕切り板やトラップ管を正しい状態に保つ必要があります。

また、調理油を排水へ流さない、食器や調理器具の油を拭き取るなど、厨房から流れ出る油脂自体を減らすことも重要です。

新規出店や設備交換で設置の要否、必要容量、設置場所が分からない場合は、店舗所在地の自治体、建物の管理会社、給排水設備業者などへ確認しましょう。

参考・引用元