グリストラップには、FRP製やステンレス製など、異なる材質の製品があります。
見た目だけでは違いが分かりにくいため、「FRPとステンレスでは何が違うのか」「どちらが長持ちするのか」「厨房にはどの材質が向いているのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
グリストラップの材質によって、本体の重さ、設置方法、耐食性、衝撃への強さ、清掃時の扱いやすさなどが異なります。
ただし、材質だけで設備の良し悪しを判断することはできません。店舗の排水量、設置場所、排水温度、必要容量、清掃方法なども含めて選ぶ必要があります。
この記事では、グリストラップに使われる主な材質、FRP製とステンレス製の特徴や違い、劣化の確認方法、交換を検討したい状態について分かりやすく解説します。
グリストラップに使われる主な材質
グリストラップは、正式には「グリース阻集器」と呼ばれる設備です。
厨房排水に含まれる油脂や食品残渣を分離し、排水管や公共下水道へ流れ込む量を抑える役割があります。
グリストラップ本体に使われる代表的な材質は、次の2種類です。
- FRP
- ステンレス
製品によっては、本体とふたで異なる材質が組み合わされています。
例えば、本体はFRP製で、上部のふたはステンレス製や鋼製、樹脂製という製品があります。
そのため、グリストラップの材質を確認するときは、本体だけでなく、ふた、バスケット、仕切り板、トラップ管なども分けて確認することが大切です。
| 確認部分 | 使用される主な材質 |
|---|---|
| 本体 | FRP、ステンレスなど |
| ふた | ステンレス、鋼、FRP、樹脂など |
| バスケット | ステンレス、樹脂など |
| 仕切り板 | ステンレス、FRP、樹脂など |
| トラップ管 | ステンレス、樹脂など |
FRPとは
FRPは「Fiber Reinforced Plastics」の略で、日本語では繊維強化プラスチックと呼ばれます。
一般的には、樹脂をガラス繊維などで補強した複合材料です。
プラスチックの軽さや耐食性に、繊維による強度を加えた材料として、タンク、配管、建築設備など幅広い用途で使用されています。
グリストラップでは、主に埋設型の本体やふたなどにFRPが使われています。
FRP製グリストラップの特徴
比較的軽量である
FRP製グリストラップは、同程度の大きさの金属製品と比べて、比較的軽量な製品が多いことが特徴です。
本体が軽ければ、搬入や設置作業を行いやすくなります。
狭い場所への搬入や、重機を使いにくい現場で採用されることもあります。
ただし、実際の重量は製品の容量、厚さ、補強構造、ふたの材質などによって異なります。
さびにくい
FRPは金属ではないため、鉄のような赤さびは発生しません。
水分や湿気に触れる設備で使いやすく、屋内・屋外のグリストラップ本体に採用されています。
ただし、さびないことと、まったく劣化しないことは同じではありません。
長期間の使用、強い衝撃、不適切な薬剤、高温の排水などによって、ひび割れ、変形、表面の劣化が起こる可能性があります。
複雑な形状を成形しやすい
FRPは、型を使ってさまざまな形状に成形できます。
槽、仕切り部分、補強部分などを設備に合わせた形状にしやすいため、グリストラップ本体にも使用されています。
屋外埋設型にも使用される
FRP製のグリストラップには、厨房内へ設置する製品だけでなく、建物の外へ埋設する製品もあります。
屋外型では、土圧、上部荷重、地下水、雨水の流入など、設置環境を考慮しなければなりません。
屋外へ設置できるかどうかは、材質だけで判断せず、製品ごとの仕様や施工条件を確認してください。
FRP製グリストラップの注意点
強い衝撃で割れる可能性がある
FRPは繊維で補強されていますが、強い衝撃や局所的な力が加わると、ひび割れや欠けが発生することがあります。
清掃時に重量のある工具を落としたり、本体へ強くぶつけたりしないよう注意が必要です。
表面の劣化に気づきにくいことがある
FRPは金属のような赤さびが出ないため、見た目だけでは劣化を判断しにくい場合があります。
定期点検では、次の状態を確認しましょう。
- 本体のひび割れ
- 表面の膨れ
- 変色
- 繊維の露出
- 接合部の隙間
- 変形
- 周囲への漏水
補修には専門的な判断が必要
小さなひび割れに見えても、内部まで損傷している可能性があります。
市販の接着剤や補修材で自己判断による修理をすると、十分な強度や水密性を確保できないことがあります。
ひび割れや漏水を発見した場合は、メーカーや設備業者へ点検を依頼してください。
排水温度や薬剤の影響を確認する必要がある
FRPの耐熱性や耐薬品性は、使用されている樹脂や製品仕様によって異なります。
高温の排水や強い薬剤を使用する場合は、使用可能な温度や薬品をメーカーの仕様書で確認してください。
ステンレスとは
ステンレスは、鉄を主成分とし、クロムなどを加えて耐食性を高めた合金です。
水分に触れる厨房設備、調理台、シンク、食器、配管などに広く使用されています。
グリストラップでは、本体、ふた、バスケット、仕切り板、配管接続部などに使われます。
製品資料では、ステンレスを意味する「SUS」という表記が使われることがあります。
ステンレス製グリストラップの特徴
厨房設備と外観をそろえやすい
業務用厨房では、シンク、作業台、棚などにステンレスが多く使われています。
ステンレス製グリストラップは、ほかの厨房設備と外観をそろえやすい点が特徴です。
特に床置き型やシンク下型では、本体が見える位置へ設置されるため、厨房内の統一感を保ちやすくなります。
強度を確保しやすい
ステンレスは、金属材料として一定の強度を持っています。
薄い板を加工して箱状に成形できるため、厨房内の埋設型、床置き型、床吊り型など、さまざまな形状の製品があります。
ただし、板厚や補強方法によって強度は異なります。
表面を洗浄しやすい
ステンレス製品は表面が比較的滑らかで、付着した汚れの状態を目視で確認しやすい傾向があります。
バスケットや仕切り板など、取り外して洗浄する部品にもステンレスが多く使われています。
ただし、表面に傷が付くと、油脂や汚れが入り込みやすくなることがあります。
金属たわしや硬すぎる工具で強くこすらず、製品に適したブラシや清掃方法を使用しましょう。
小型から大型まで製品がある
ステンレス製グリストラップには、小型の床置きタイプから、大容量の埋設型、側溝から排水を受けるタイプまであります。
材質がステンレスという理由だけで、特定の店舗規模に限定されるわけではありません。
必要容量や設置方式に合った製品を選ぶ必要があります。
ステンレス製グリストラップの注意点
ステンレスも腐食することがある
ステンレスは一般的に耐食性を備えていますが、どのような環境でも腐食しないわけではありません。
塩分、薬剤、汚れの長期付着、異なる金属との接触、表面の傷などによって、さびや腐食が発生する可能性があります。
清掃時には、次の状態を確認してください。
- 点状のさび
- 茶色や黒色の変色
- 溶接部分の腐食
- 表面の深い傷
- 本体の穴あき
- 接合部からの漏水
製品によって使用されるステンレスの種類が異なる
ステンレスには複数の種類があり、耐食性や強度などの性質が異なります。
本体、ふた、バスケットで異なるステンレスが使われている場合もあります。
「ステンレス製」とだけ表示されている場合は、必要に応じてメーカーの仕様書や納入図を確認してください。
FRP製より重い場合がある
同程度の容量や構造で比較した場合、ステンレス製品はFRP製品より重くなることがあります。
搬入経路、床の耐荷重、設置作業、ふたの開閉などを確認する必要があります。
ただし、実際の重量は板厚、補強、製品形状によって異なるため、カタログの本体質量を確認しましょう。
へこみや変形が起こることがある
強い衝撃や不適切な荷重が加わると、本体やふたがへこむ場合があります。
ふたの上へ、製品の耐荷重を超える重量物を置いたり、対応していない車両を乗り入れたりしないでください。
FRP製とステンレス製の違いを比較
| 比較項目 | FRP製 | ステンレス製 |
|---|---|---|
| 材料 | 繊維で強化した樹脂 | クロムなどを含む鉄系合金 |
| 重量 | 比較的軽量な製品が多い | FRP製より重い場合がある |
| さび | 金属のような赤さびは発生しない | 環境によって腐食する場合がある |
| 衝撃 | 強い衝撃で割れる可能性がある | 衝撃でへこみや変形が起こることがある |
| 外観 | 成形品特有の外観 | 厨房設備と統一しやすい |
| 清掃 | 表面を傷つけない清掃が必要 | 滑らかな表面を清掃しやすい |
| 主な劣化 | ひび割れ、変形、表面劣化 | 腐食、穴あき、溶接部の劣化 |
| 主な用途 | 埋設型、屋外型など | 埋設型、床置き型、床吊り型など |
この比較は一般的な傾向です。
同じFRP製またはステンレス製でも、製造方法、厚さ、補強構造、製品仕様によって性能は異なります。
FRP製とステンレス製はどちらが長持ちする?
材質名だけで、どちらが必ず長持ちするとは判断できません。
グリストラップの耐用状態には、次の条件が影響します。
- 製品の設計や品質
- 設置場所
- 排水温度
- 油脂や食品残渣の量
- 使用する洗剤や薬剤
- 清掃頻度
- 清掃道具の使い方
- 本体に加わる荷重
- 屋外の場合は土圧や地下水
- 施工状態
FRP製でも、強い衝撃や不適切な施工によって早期に損傷することがあります。
ステンレス製でも、汚れを長期間放置したり、材質に合わない薬剤を使用したりすると、腐食する可能性があります。
長く使用するには、材質に合った設置・清掃・点検を行うことが重要です。
FRP製が向いていると考えられるケース
FRP製グリストラップは、次のような条件で候補になります。
- 本体の重量を抑えたい
- 搬入経路が狭い
- 屋外へ埋設する
- 金属のさびを避けたい
- FRP製の規格品が設置条件に合う
ただし、屋外へ埋設する場合は、上部荷重、土圧、地下水、ふたの仕様なども確認しなければなりません。
ステンレス製が向いていると考えられるケース
ステンレス製グリストラップは、次のような条件で候補になります。
- 厨房内の設備と外観をそろえたい
- 床置き型を設置したい
- 本体が見える場所へ設置する
- ステンレス製の埋設型や床吊り型が必要
- 取り外して洗浄する部品を扱いやすくしたい
ステンレス製を選ぶ場合も、排水量に合った容量や設置方式を確認する必要があります。
材質だけでグリストラップを選んではいけない
グリストラップを選ぶとき、材質は重要な確認項目ですが、それだけで製品を決めることはできません。
優先して確認したい項目は次のとおりです。
必要容量
厨房から流れる排水量に対して設備が小さすぎると、油脂が十分に浮く前に流出口へ到達する可能性があります。
店舗の業態、客席数、食数、使用水量などを基に、必要容量を計算します。
許容流入流量
短時間に大量の排水が入る場合は、設備が受け入れられる流量を確認します。
シンクの水を一度に抜く場合や、食器洗浄機を使用する場合は特に注意が必要です。
設置方式
厨房床下へ埋設するのか、シンク下へ床置きするのか、屋外へ設置するのかによって、適した製品が異なります。
清掃スペース
グリストラップは、設置後も継続的な清掃が必要です。
ふたを開けられるか、バスケットや仕切り板を取り外せるか、汚泥を回収できるかを確認しましょう。
排水温度
製品ごとに使用できる排水温度の範囲が定められている場合があります。
食器洗浄機やゆで麺機などから高温の排水が出る場合は、メーカーや設備業者へ確認してください。
設置場所の荷重
ふたの上を人が歩くのか、台車が通るのか、車両が通るのかによって必要な耐荷重が変わります。
本体の材質だけでなく、ふたの材質と荷重区分も確認してください。
本体とふたの材質は別に確認する
グリストラップの本体がFRP製でも、ふたが同じ材質とは限りません。
製品によっては、次のような組み合わせがあります。
- FRP製本体とFRP製ふた
- FRP製本体とステンレス製ふた
- FRP製本体と鋼製ふた
- ステンレス製本体とステンレス製ふた
- ステンレス製本体とFRP製ふた
特に屋外型では、ふたへ車両や荷物の荷重が加わる場合があります。
本体が使用環境に合っていても、ふたの耐荷重が不足していれば安全に使用できません。
製品を確認するときは、次の項目を分けて確認しましょう。
- 本体材質
- ふた材質
- ふたの重量
- ふたの耐荷重
- 滑り止めの有無
- 開閉方法
- 防臭や水密性
現在使っているグリストラップの材質を確認する方法
銘板や製品ラベルを確認する
本体やふたの周辺に、メーカー名、型式、容量などを記載した銘板が付いている場合があります。
メーカーと型式が分かれば、製品カタログや納入図から材質を確認できます。
設備図面や納入図を確認する
建物の竣工図、給排水設備図、厨房設備図、製品納入図などに、次のような表記が記載されている場合があります。
- FRP
- SUS
- ステンレス
- 本体材質
- ふた材質
見た目だけで判断しない
金属のように見える部分が、ふただけという場合があります。
本体はFRP製で、上部にステンレス製のふたを組み合わせている製品もあります。
材質が不明な場合は、磁石や工具による自己判断ではなく、メーカーや設備業者へ確認してください。
FRP製グリストラップの点検ポイント
FRP製品では、次のような状態を定期的に確認します。
- 本体にひび割れがないか
- 槽の角や接合部に亀裂がないか
- 表面が膨れていないか
- ガラス繊維が露出していないか
- 本体が変形していないか
- 配管接続部から漏水していないか
- 周囲の床や土が湿っていないか
小さなひび割れでも、排水が漏れている場合は使用を続けず、専門業者へ相談してください。
ステンレス製グリストラップの点検ポイント
ステンレス製品では、次の状態を確認します。
- 本体やふたにさびがないか
- 溶接部分が変色していないか
- 穴あきや腐食がないか
- 本体やふたが変形していないか
- 表面に深い傷がないか
- 接合部から漏水していないか
- ふたが正しく閉まるか
表面の汚れに見えても、腐食が進行している場合があります。
清掃しても変色や凹凸が残る場合は、設備業者へ確認しましょう。
交換や修理を検討したい状態
次の状態がある場合は、材質にかかわらず修理や交換を検討します。
- 本体から排水が漏れている
- 大きなひび割れや穴あきがある
- 本体が著しく変形している
- ふたが閉まらない
- 仕切り板を固定できない
- トラップ管の接続部分が破損している
- 清掃しても排水が正常に流れない
- 現在の業態に対して容量が不足している
本体が破損している場合、排水が床下や土中へ漏れ、建物や周辺環境へ影響を与える可能性があります。
応急処置だけで長期間使用せず、メーカーまたは給排水設備業者へ点検を依頼してください。
材質に合った清掃方法を確認する
FRP製とステンレス製では、使用できる清掃用具や薬剤が異なる場合があります。
共通して注意したいのは、次の点です。
- 鋭利な工具で本体を削らない
- 強い衝撃を与えない
- 材質に合わない薬剤を使用しない
- 異なる薬剤を混ぜない
- 高温のお湯を大量に流さない
- メーカーの取扱説明書に従う
硬く固まった油脂を、金属製のへらや工具で無理に削ると、FRPの表面やステンレスの保護表面を傷つける可能性があります。
油脂や汚泥を回収したうえで、材質に適したブラシや洗浄剤を使用しましょう。
材質に関するよくある質問
FRP製とステンレス製はどちらが優れていますか?
どちらか一方が、すべての店舗で優れているわけではありません。
設置場所、必要容量、排水温度、搬入条件、清掃方法などによって適した材質が異なります。
FRP製は割れやすいですか?
通常の使用を前提に設計されていますが、強い衝撃や不適切な荷重によって、ひび割れや欠けが起こる可能性があります。
製品仕様に従い、工具を落としたり、対応していない荷重を加えたりしないよう注意してください。
ステンレス製は絶対にさびませんか?
絶対にさびないわけではありません。
塩分、薬剤、異種金属との接触、表面の傷、汚れの長期付着などによって腐食する場合があります。
本体がFRPで、ふたがステンレスでも問題ありませんか?
製品として設計された組み合わせであれば、異なる材質が使われることは珍しくありません。
本体とふたの材質、耐荷重、適用場所を製品仕様で確認してください。
材質は自分で見分けられますか?
外観から推測できる場合もありますが、ふただけ異なる材質の製品もあるため、確実ではありません。
銘板、製品型式、納入図、設備図面などで確認しましょう。
古いグリストラップは材質だけ交換できますか?
本体の一部分だけを交換できるかどうかは、製品構造や劣化状態によって異なります。
バスケットや仕切り板などの部品を交換できる場合もありますが、本体が破損している場合は設備全体の交換が必要になることがあります。
油脂汚れの清掃を補助する方法
FRP製・ステンレス製のどちらでも、グリストラップを正常に機能させるには、バスケットの食品残渣、水面の油脂、底部の汚泥を定期的に回収することが基本です。
これらを回収したあと、槽の壁面や仕切り板に付着した油脂汚れには、材質と用途に合った業務用洗浄剤を使用する方法があります。
「グリスとれ~る」は、アルカリによる石鹸水化作用を利用し、グリストラップに付着した油脂汚れの除去をサポートする業務用洗浄剤です。
食品残渣、浮上油脂、底部の汚泥を回収したうえで、槽内や部品に付着した油脂汚れを清掃する際の選択肢として使用できます。
使用前には、設置されているグリストラップの材質やメーカーの注意事項も確認してください。
商品情報や使用方法は、以下の公式販売ページで確認できます。
まとめ
グリストラップ本体に使われる代表的な材質は、FRPとステンレスです。
それぞれの主な特徴は次のとおりです。
- FRP製:比較的軽量で、金属のような赤さびが発生しない
- ステンレス製:厨房設備と外観をそろえやすく、幅広い設置方式の製品がある
一方、FRP製ではひび割れや表面劣化、ステンレス製では腐食や変形などに注意が必要です。
どちらが長持ちするかは材質名だけでは決まらず、製品仕様、設置環境、排水温度、清掃方法、荷重などによって変わります。
グリストラップを選ぶ際は、材質だけでなく、次の項目も確認しましょう。
- 必要容量
- 許容流入流量
- 設置方式
- 本体とふたの材質
- ふたの耐荷重
- 排水温度
- 清掃スペース
- 自治体や建物の設備基準
現在使用している設備の材質が分からない場合は、銘板、メーカー名、型式、設備図面、納入図などを確認してください。
ひび割れ、腐食、穴あき、変形、漏水が見つかった場合は、自己判断で補修せず、メーカーや給排水設備業者へ相談しましょう。
