グリストラップの仕切り板とは?取り外すとどうなるかを解説

グリストラップの仕切り板の役割と取り外した場合のリスクを解説する図解

グリストラップの内部には、槽を複数に区切る板状の部品が取り付けられています。

この部品が「仕切り板」です。

仕切り板は、単にグリストラップの中を第1槽・第2槽・第3槽へ分けているだけではありません。

厨房から流れ込んだ排水の勢いを弱め、油脂が水面へ浮く時間や、細かな食品残さが槽の底へ沈む時間を確保する重要な役割があります。

清掃の際に仕切り板を取り外したあと、戻し忘れたり、向きを間違えたりすると、グリストラップ本来の油脂分離機能が低下する可能性があります。

この記事では、グリストラップの仕切り板の役割、取り外したまま使用した場合に起こる問題、正しい位置や向きの確認方法、破損・紛失した場合の対応を分かりやすく解説します。

グリストラップの仕切り板とは

グリストラップの仕切り板とは、本体内部を複数の槽へ区切り、厨房排水が流れる方向や速度を調整する部品です。

一般的なグリストラップでは、厨房排水が第1槽から第2槽、第3槽へ順番に移動します。

仕切り板があることで、排水は流入口から流出口へ直線的に進まず、製品ごとに設計された経路を通ります。

排水が各槽へ一定時間とどまることで、水より軽い油脂は水面へ浮き、水より重い食品残さや汚泥は槽の底へ沈みます。

部品主な役割
バスケット米粒、麺、野菜くずなどの大きな食品残さを受け止める
仕切り板排水の流れを調整し、油脂や汚泥を分離する時間を確保する
複数の槽油脂の浮上と汚泥の沈殿を段階的に進める
トラップ管水面下の比較的油脂の少ない排水を流出口へ送る

仕切り板の主な役割

グリストラップの仕切り板には、主に次の役割があります。

  • 流入した排水の勢いを弱める
  • 排水を複数の槽へ順番に通す
  • 排水が槽内にとどまる時間を確保する
  • 油脂が水面へ浮くのを助ける
  • 細かな食品残さや汚泥が槽底へ沈むのを助ける
  • 浮上した油脂が次の槽へ流れるのを抑える
  • 槽底の汚泥が巻き上がるのを抑える

排水の勢いを弱める

厨房では、シンク、食器洗浄機、ゆで麺機などから排水が発生します。

大量の水が勢いよくグリストラップへ流れ込むと、槽内の水が大きく動きます。

排水がそのままの勢いで流出口へ向かえば、油脂が水面へ浮く前に次の槽や排水管へ流れてしまいます。

仕切り板は、排水の流れる方向を変え、勢いを弱める働きをします。

槽内の流れが緩やかになると、水より軽い油脂は水面へ浮きやすくなり、水より重い食品残さや汚泥は底へ沈みやすくなります。

排水の滞留時間を確保する

油脂と水は、グリストラップへ入った瞬間に完全に分離するわけではありません。

食器洗浄などで細かな粒になった油脂が水面へ浮くまでには、ある程度の時間が必要です。

排水が槽内にとどまる時間を「滞留時間」といいます。

仕切り板が正しく取り付けられていると、排水は第1槽、第2槽、第3槽を順番に通ります。

その間に油脂の浮上と汚泥の沈殿が進み、比較的油脂の少ない排水が流出口へ送られます。

仕切り板がない場合は、排水が短い経路で流出口へ進み、十分な滞留時間を確保できない可能性があります。

浮上油脂が次の槽へ流れるのを抑える

厨房排水に含まれる動植物性油脂は、水より軽いため水面へ浮きます。

仕切り板は、排水を水面より下側や中間部分から次の槽へ移動させる構造の一部です。

これにより、水面に浮いた油脂がそのまま排水の流れに乗るのを抑えます。

仕切り板が外れている場合や、本体との間に大きな隙間がある場合は、第1槽に浮いた油脂が第2槽、第3槽へ流れやすくなります。

第3槽の水面まで厚い油脂層ができている場合は、清掃不足だけでなく、仕切り板の状態も確認しましょう。

槽底の汚泥が巻き上がるのを抑える

グリストラップの底には、バスケットを通過した細かな食品残さや調味料などが汚泥として沈みます。

排水の流れが強いと、底に沈んでいた汚泥が巻き上がり、次の槽へ移動することがあります。

仕切り板によって排水の流れを緩やかにすることで、汚泥が水中へ再び広がるのを抑えられます。

ただし、汚泥を長期間放置して大量に堆積させると、仕切り板が正しく設置されていても流出しやすくなります。

仕切り板の点検とあわせて、槽底の汚泥も定期的に回収する必要があります。

一般的な3槽構造と仕切り板の働き

一般的な3槽式グリストラップでは、排水は次のように移動します。

  1. 厨房排水が第1槽へ流れ込む
  2. バスケットが大きな食品残さを受け止める
  3. 第1槽で油脂が浮き、汚泥が沈む
  4. 仕切り板の通水部分を通って第2槽へ移動する
  5. 第2槽で残った油脂や汚泥をさらに分離する
  6. 次の仕切り部分を通って第3槽へ移動する
  7. 第3槽で最終的な分離を行う
  8. トラップ管から比較的油脂の少ない排水が流れる
主な状態仕切り板との関係
第1槽食品残さや油脂が最も多く流れ込む排水の勢いを弱め、油脂や汚泥の流出を抑える
第2槽第1槽で分離しきれなかった油脂や汚泥がたまる再び滞留時間を作り、分離を進める
第3槽比較的油脂や汚泥が少ない排水が集まる流出口へ送る前の最終的な分離を助ける

製品によって、槽の数、仕切り板の枚数、排水が通過する位置や方向は異なります。

すべてのグリストラップが同じ構造ではないため、実際の取扱説明書や製品図面を確認してください。

仕切り板を取り外すとどうなる?

仕切り板を外したまま使用すると、グリストラップ内部の排水経路が変わり、本来の油脂分離機能が低下する可能性があります。

主に次のような問題が考えられます。

  • 排水が短時間で流出口へ進む
  • 油脂が浮く前に次の槽へ流れる
  • 第3槽まで大量の油脂が流れ込む
  • 槽底の汚泥が巻き上がる
  • 油脂や汚泥が排水管へ流れる
  • 排水管の詰まりや悪臭が発生しやすくなる

排水が短い経路で流れる

仕切り板がないと、排水が複数の槽を決められた経路で通らず、流入口から流出口へ直接進む場合があります。

グリストラップの容量が十分にあっても、排水が短時間で通過すれば、油脂を分離するための時間を確保できません。

油脂が浮く前に排水管へ流れる

厨房排水に含まれる油脂の一部は、洗剤や水流によって細かな油滴になっています。

細かな油滴は、排水の流れが落ち着くことで徐々に集まり、水面へ浮きます。

仕切り板がなく流れが速い状態では、油脂が浮上する前に最終槽や排水管へ到達する可能性があります。

汚泥が次の槽へ流れやすくなる

仕切り板がないと、流入した排水の勢いが槽底まで伝わりやすくなります。

底へ沈んでいた汚泥が巻き上がり、第2槽、第3槽、下流の排水管へ流れる可能性があります。

排水管が詰まりやすくなる

グリストラップを通過した油脂は、下流の排水管内で冷えると粘りが強くなったり、固まったりします。

油脂へ食品残さや汚泥が付着すると、排水管の内側に厚い汚れの層ができることがあります。

蓄積が進むと、排水の流れが悪くなり、悪臭や逆流の原因になります。

仕切り板を外すと排水がよくなるように見える理由

仕切り板を外すと、一時的に排水が速く流れるように見える場合があります。

これは、排水が複数の槽を決められた経路で通らず、短い経路で流出口へ向かうためです。

しかし、グリストラップは排水をできるだけ速く流す設備ではありません。

排水を一定時間とどめ、油脂や食品残さを分離するための設備です。

仕切り板を外して流れを速くすることは、グリストラップ本来の役割を失わせる原因になります。

仕切り板を取り付けると排水があふれる場合は、板を外すのではなく、次の原因を確認しましょう。

  • バスケットが食品残さで詰まっている
  • 仕切り板の通水部分に汚れが固着している
  • 槽底に汚泥が大量にたまっている
  • トラップ管や流出口が詰まっている
  • 下流の排水管が閉塞している
  • 短時間に流れ込む排水量が多すぎる
  • 設備容量が店舗の排水量に合っていない

仕切り板の向きを間違えるとどうなる?

グリストラップの仕切り板には、上下、表裏、取り付ける位置が決められている場合があります。

複数の板が似た形をしていても、すべて同じ向きで取り付けるとは限りません。

向きや位置を間違えると、次のような問題が起こる可能性があります。

  • 排水が正しい経路を通らない
  • 水面の油脂が次の槽へ流れやすくなる
  • 排水の流れが極端に悪くなる
  • 本体との間に大きな隙間ができる
  • 仕切り板を固定できない
  • ふたが正しく閉まらない

清掃前に仕切り板の位置や向きを撮影しておくと、元へ戻しやすくなります。

仕切り板の正しい位置を確認する方法

取扱説明書や製品図面を確認する

最も確実なのは、グリストラップの取扱説明書、納入図、部品図を確認する方法です。

本体のメーカー名と型式が分かれば、メーカーのウェブサイトや問い合わせ窓口から資料を入手できる場合があります。

本体の溝や受け部分を確認する

仕切り板は、本体内部の溝や受け金具へ差し込む構造になっている場合があります。

無理な力を加えなくても正しく収まる位置があるか確認してください。

取り外す前に写真を撮る

清掃前に、仕切り板の枚数、向き、高さ、取り付け位置を写真で記録しておくと、戻し間違いを防ぎやすくなります。

清掃マニュアルへ写真を載せる

店舗スタッフが交代しても正しく戻せるよう、清掃マニュアルへ写真や図を載せておきましょう。

メーカーや設備業者へ確認する

正しい位置が分からない場合は、推測で取り付けず、メーカーまたは給排水設備業者へ確認してください。

確認方法確認できる内容
取扱説明書仕切り板の枚数、位置、向き
製品納入図内部構造や部品番号
メーカーの部品図交換部品の形状や材質
清掃前の写真実際に取り付けられていた状態
設備業者の点検不足部品や設置状態の確認

仕切り板が見つからない場合

グリストラップの内部に仕切り板が見当たらない場合は、次の可能性があります。

  • 清掃後に戻し忘れている
  • 以前の運営者が取り外した
  • 破損したため廃棄された
  • 槽の底へ落下している
  • 本体とは別の場所に保管されている
  • 製品独自の構造で板状の仕切りを使用していない

すべてのグリストラップが同じ形の仕切り板を使用しているわけではありません。

近年の製品には、従来の板状部品とは異なる構造で排水の流れを調整するものもあります。

仕切り板がないことだけで部品不足と判断せず、メーカーと型式を確認して製品本来の構造を調べましょう。

仕切り板が破損している場合

仕切り板に割れ、曲がり、腐食、欠けなどがあると、本体との間に隙間が生じ、排水が本来とは異なる経路を通る可能性があります。

次の状態が見られる場合は、修理または交換を検討してください。

  • 大きく曲がっている
  • 本体の溝へ入らない
  • 板の一部が欠けている
  • ひび割れがある
  • 穴が開いている
  • 腐食が進んでいる
  • 固定できず浮いてくる
  • 本体との間に大きな隙間がある

応急的に板や金属片を差し込むと、排水経路をふさいだり、本体を傷つけたりする可能性があります。

本体メーカーの純正品または指定された適合部品を使用しましょう。

仕切り板の主な材質

グリストラップの仕切り板には、ステンレス、FRP、樹脂などが使用されます。

材質主な特徴確認したい劣化
ステンレス強度があり、厨房設備で広く使用される腐食、曲がり、溶接部分の破損
FRP比較的軽く、金属のような赤さびがないひび割れ、欠け、繊維の露出
樹脂軽量で取り扱いやすい割れ、変形、固定部分の破損

仕切り板を清掃するときは、材質に適したブラシや洗浄剤を使用します。

鋭利な工具や硬い金属製のへらで油脂を削ると、表面を傷つける可能性があります。

仕切り板の清掃方法

具体的な手順は製品ごとに異なりますが、一般的には次の流れで行います。

  1. 清掃前の取り付け状態を確認・撮影する
  2. ゴム手袋など必要な保護具を着用する
  3. バスケットの食品残さを回収する
  4. 水面に浮いた油脂を回収する
  5. 仕切り板をゆっくり取り外す
  6. 付着した油脂やぬめりを清掃する
  7. 割れ、曲がり、腐食などを確認する
  8. 槽底の汚泥を回収する
  9. 仕切り板を正しい位置と向きへ戻す
  10. 少量の水を流して排水状態を確認する
  11. ふたを確実に閉める

仕切り板を勢いよく引き上げると、油脂や汚水が周囲へ飛び散ることがあります。

厨房内の食品や調理器具を汚染しないよう、ゆっくり取り扱いましょう。

清掃後に確認したいポイント

仕切り板を戻したあとは、次の状態を確認します。

  • すべての仕切り板がそろっているか
  • 正しい溝や受け部分へ入っているか
  • 上下や表裏を間違えていないか
  • 斜めになっていないか
  • 本体との間に大きな隙間がないか
  • バスケットとトラップ管も元へ戻したか
  • 排水が正常に流れるか
  • ふたが正しく閉まるか

清掃担当者だけでなく、責任者が最後に確認する仕組みにすると、部品の戻し忘れを防ぎやすくなります。

居抜き物件で仕切り板を確認する

居抜き物件では、グリストラップ本体が残っていても、仕切り板やトラップ管などの部品が不足している場合があります。

開業前には、次の項目を確認しましょう。

  • メーカー名と型式
  • 仕切り板の必要枚数
  • 現在取り付けられている枚数
  • 仕切り板の位置と向き
  • 割れ、曲がり、腐食の有無
  • バスケットとトラップ管の有無
  • 第3槽まで油脂や汚泥が流れていないか
  • 排水管の詰まり履歴

部品が不足したまま営業を始めると、油脂を十分に分離できず、排水トラブルにつながる可能性があります。

仕切り板を交換するときの確認項目

確認項目確認する理由
メーカー名本体に適合する部品を特定するため
本体の型式必要な枚数や形状を確認するため
仕切り板の寸法本体の溝へ正しく収まるか確認するため
材質排水温度や清掃方法に適合させるため
上下・表裏正しい排水経路を確保するため
取り付け位置第1槽側・流出口側などの違いを確認するため

見た目や寸法が近い板を代用品として使用すると、排水経路や隙間が本来の設計と異なる可能性があります。

原則として、本体メーカーの純正品または指定された適合部品を使用してください。

仕切り板の役割をスタッフへ周知する

仕切り板は、清掃作業の邪魔になる板のように見える場合があります。

役割を知らないスタッフが、「水が流れやすくなるから」という理由で取り外すことも考えられます。

店舗の清掃マニュアルには、次の内容を記載しましょう。

  • 仕切り板の役割
  • 取り外したまま使用してはいけないこと
  • 正しい位置と向き
  • 清掃前後の写真
  • 必要な枚数
  • 破損時の連絡先
  • 交換部品のメーカーと型式

清掃チェック表に「仕切り板を元へ戻した」という項目を設けると、戻し忘れを防ぎやすくなります。

仕切り板に関するよくある質問

仕切り板は必ず必要ですか?

仕切り板を使用する設計のグリストラップでは、油脂分離機能を維持するために必要です。

一方で、板状の部品を使わない独自構造の製品もあるため、メーカーの仕様を確認してください。

仕切り板を外すと排水がよく流れます

排水が短い経路で流出口へ進むため、一時的に流れやすく見える場合があります。

しかし、油脂や汚泥を分離する時間が不足するため、外したまま使用してはいけません。

仕切り板の向きが分かりません

メーカー名と型式を確認し、取扱説明書、製品図面、部品図などで確認してください。

分からない場合は、メーカーや給排水設備業者へ問い合わせましょう。

仕切り板が1枚足りません

本来必要な枚数をメーカー資料で確認し、不足している場合は適合する部品を手配してください。

仕切り板が曲がっています

本体との間に大きな隙間ができる場合や、正しい位置へ固定できない場合は交換を検討します。

仕切り板を自作できますか?

形状、寸法、材質、通水位置が本来の設計と異なると、油脂分離機能や排水状態へ影響する可能性があります。

メーカーの純正品または指定された適合品を使用することが基本です。

仕切り板を戻したら排水があふれます

位置や向きの間違い、通水部分の詰まり、バスケットの目詰まり、槽底の汚泥、下流配管の詰まりなどが考えられます。

仕切り板を再び外して使用せず、設備全体を点検してください。

仕切り板に付着した油脂を清掃する方法

グリストラップ清掃では、バスケットの食品残さ、水面の浮上油脂、槽底の汚泥を先に回収することが基本です。

これらを取り除いたあと、仕切り板や槽の壁面に残った油脂汚れには、材質に合ったブラシや業務用洗浄剤を使用する方法があります。

有限会社遊翔の「グリスとれ~る」は、アルカリによる石鹸水化作用を利用し、グリストラップの仕切り板や槽内に付着した油脂汚れの除去をサポートする業務用洗浄剤です。

水面の浮上油脂や槽底の汚泥を排水管へ流すための製品ではありません。

食品残さ、浮上油脂、汚泥を回収したあとの付着油脂清掃に使用する選択肢です。

商品情報や使用方法は、以下の販売ページで確認できます。

まとめ

グリストラップの仕切り板は、排水の流れを調整し、油脂や食品残さを分離する時間を確保する重要な部品です。

主な役割は次のとおりです。

  • 排水の勢いを弱める
  • 排水を複数の槽へ順番に通す
  • 油脂が水面へ浮く時間を確保する
  • 食品残さや汚泥が槽底へ沈むのを助ける
  • 浮上油脂や汚泥が次の槽へ流れるのを抑える

仕切り板を外したまま使用すると、排水が短時間で流出口へ進み、油脂や汚泥が十分に分離されない可能性があります。

一時的に排水が速くなっても、グリストラップ本来の機能が低下するため、仕切り板を取り外した状態で使用してはいけません。

清掃時には、取り外す前の状態を写真に残し、作業後に正しい位置と向きへ戻しましょう。

仕切り板がない、枚数が足りない、破損している、向きが分からない場合は、メーカー名と型式を確認し、メーカーまたは給排水設備業者へ相談してください。

参考・引用元